スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

番外編 司令候補と元怪人(下)

ゼノク・道場――

鼎と桐谷はそこで槍の鍛練をしている狭山を発見。狭山はずっと集中しながら棒術を鍛練中。


「…あれ、紀柳院と桐谷…だっけ?」
狭山が気づいた。なんだか冷めた言い方だが、彼はいつもこんな感じらしい。

「狭山と直に顔を合わせるのは初めてだな」
「…あれ、紀柳院の制服変わってる。何かしらあったのか」


狭山は鼎が司令補佐になったことを知らないために、こんなリアクション。リアクションは薄いが。
支部とゼノク隊員の中には鼎が司令補佐になったことを知らない人もいる。狭山はまさにそれ。
二階堂は知っていた。


しばし、休憩――


「なんで俺が人間になってまで味方になったって?…何回も戦っているうちにだんだん異空間が窮屈になったんだよ。
鐡は『自由にしな』ってスタンスだったから、俺は怪人やめて『狭山蓮』として生きることにしたわけ」
「そういうことだったのか…」


「俺は今、楽しいんだ」

狭山はずっとポーカーフェイスだったが、なんとなく笑ったように見えた。
彼は人間ライフを満喫しているようだ。その槍さばきを長官に見込まれてゼノク隊員になったとか。


狭山は組織に必要な存在になったわけで。



本部では宇崎がうきうきであるものを出していた。


「きたきたー!鼎用のコートが。おぉ〜、いい出来じゃないか」
宇崎は制服の上に羽織る組織用の薄手のコートを広げ、ニヤニヤしてる。見た目は司令用のものとはほとんど変わらない。

それは黒いゆったりしたもので、鼎のものはフードが少しゆったりしている。これは鼎の仮面との兼ね合いがあるためで。


そこに御堂が再び入ってきた。御堂は宇崎が手にした真新しいコートを見た。

「室長…そのコート、鼎用のやつ?」
「そうだよ。カッコいいだろ〜」

宇崎、どや顔。そこに御堂が指摘。


「これ…司令用のものじゃねーか!どういうことだよ、説明しろーっ!」
御堂は宇崎の胸ぐらを掴んでいる。

「まぁまぁ落ち着け。これは彼女の了承を得て作って貰ったんだよ。微妙にカスタムしてあるだろ?」
御堂はようやく手を離した。よく見るとフードがゆったりしている。

「これ…仮面との兼ね合いもあってこうしたのか?」

「…そ。ゼルフェノア隊員の制服は白だろ?ゼノクはブルーグレーだが。俺達司令クラスの制服は紺色だが…黒いコートは司令用。
鼎はあくまでも『補佐』だから制服は白のまま。これにこの黒いコートを羽織ると際立つだろ?」
「印象操作じゃないの…それ。『鼎が司令ですよー』的な」

「コート込みで白黒ツートーンなの、鼎くらいだぞ。隊員用のコートは白いわけだから。
…あ、長官も白黒ツートーンだったわ。あの人、あまりコート着ないからな〜」


あんたも司令用のコート、着てないだろうが!…と突っ込みそうになった御堂なのであった。



やがて、鼎と桐谷が本部に戻ってきた。

「お、鼎おかえり〜。桐谷もおかえり〜。鼎〜、お前用のおニューのコート届いたよ〜」
「来たのか?」

宇崎は早速その組織用のコートを見せた。鼎はフードを見る。
「ちょっと羽織ってみたら?ついでにフードも被ってみたら?」

宇崎に促され、鼎はコートを羽織ってみる。
宇崎は全身用の鏡の前に鼎を連れていく。彼女は白い制服に黒いコート姿を見た。

白黒際立っているな…。


鼎はフードを被ってみる。


かなり際立ってるというか…黒いコートに白い仮面、端から見たらかなり怪しいな…自分…。
組織用のものだから怪しまれないが。

この出で立ちで司令補佐…。滑稽だな。


「鼎、似合ってるじゃないか〜。カッコいいぞ。…一気に司令感出たね…」
「そ、そうか?」

鼎はフードを脱ぎ、宇崎を見た。
「鼎、和希とは最近どうなんだ?和希は和希で忙しいみたいだが、時間作ってくれてるし」

「…別にいいだろ」


鼎の気に障ったようだ。



本部・屋上。なぜか御堂はそこでコーヒーブレイク中。そこに鼎がやってきた。


「和希、探したぞ」
御堂はコートを羽織った鼎を見る。どう見ても司令にしか見えない…。

「鼎、なんで居場所がわかったんだ?」
「彩音が教えてくれたよ。最近和希とまともに話、してないからな」


「俺もそう、思っていた。最近バタバタしすぎて…お前だって補佐やんの大変なのにな。
ようやく落ち着けたからゆっくり話せるぞ」
「和希…私はこれでいいのかまだわからないんだ。居場所として『補佐』にはなったものの、重圧もあるし…責任重大だろ?」

「鼎、考えすぎ。室長が司令なんだからそこまで考えるなよ。
お前はお前がやれることをすればいいの。ちょっと来い」


鼎は恐る恐る距離を縮める。御堂は鼎の手を強引に取り、引き寄せた。
「こ…これで少しは安心したか?」

御堂は鼎を抱きしめた形に。ちなみに御堂の顔は赤い。照れがあるらしい。
「…和希、ありがとう」

鼎は火傷の跡を隠すために、薄手の黒手袋を履いている。鼎からしたら御堂は大事な存在で。



こっそりその2人の様子を見ている人達が。彩音と時任だった。


「きりゅさんと御堂さん、付き合ってるってマジだったんだ…。は、ハグしてる…」
「いちか、そっとしておこうよ。いちかは知らないとは思うけど、御堂さんは鼎が入った当初からずっと見ていたからね。先輩としてさ」


時任は鼎の後輩に当たる。だから知らないこともある模様。


「きりゅさん…司令にしか見えないよ。あのコートのせいかな?」
「あれ、司令用のコートだから。室長が鼎用にカスタムして貰ったんだって」

「なんかめっちゃかっこよくなってる…」



時任は存在感を増す鼎の姿に思わず見とれてしまっていた。


番外編 司令補佐と元怪人(上)

「今日だっけ?本部から紀柳院が来るの」
「そうだよ。西澤、どうしたのさ」

蔦沼長官管轄の群馬県某町のゼノクでは、蔦沼と西澤室長がこんな会話をしていた。


「紀柳院が狭山について知りたいとか言ったんだっけ?なんで敵幹部から人間になってまで味方になったのとか、そういうの」
「本部からは紀柳院と桐谷が来るんだよね。桐谷はすっかり彼女の専属運転手だな〜」

「長官、呑気すぎます。彼女、列車移動が極度に苦手ですから車移動か、組織専用機じゃないと移動出来ないんで仕方ないですよ。
数年前に任務の移動で電車使ったらパニック障害起きて以降、彼女は列車に乗れなくなりましたから」

「そこは仕方ない」
「しかし、なんで今になって狭山のことが気になったんだ?元怪人というのもあるが…」
「本部に経緯が詳しく知られてなかったのもあるのかも。宇崎も引っ掛かってたみたいだね」



鼎と桐谷はゼノクに到着。


出迎えてくれたのは二階堂だった。

「お待ちしてました〜。鼎さん、いや…司令補佐ですか」
「いつも通りの呼び方でいいよ」
「え…じゃあ鼎さんで」


二階堂は司令室へと案内した。

「じゃ、私はこれで」



司令室には蔦沼・西澤・南のいわゆる「ゼノク3役」がいた。南は蔦沼の秘書で世話役だが、ゼノクにも必要な存在なためにこんな立ち位置に。


「紀柳院、ゼノクに来るのは久しぶりじゃないかなぁ〜」
蔦沼が優しく話しかけてきた。
「お久しぶりです」

「補佐、慣れてきたみたいじゃないか。北川からも話は聞いたよ。紀柳院、最近どう?」
「まぁ…とんとんですかね…」

鼎、返答に困る。蔦沼は鼎の声でわかった。彼女を少し困らせてしまったらしい。
鼎は顔の大火傷の跡を隠すために白い仮面を着けているため、声のトーンや抑揚・仕草などでしかわからないのが難しい。


「紀柳院…なんかごめんね。狭山について知りたいんでしょう。本人は呼ばない方がいいよね。気まずくなりそうだし」
「そうして頂ければありがたいです」

鼎は緊張気味だった。



「釵游(さゆう)が人間になったのは数ヶ月前。鳶旺(えんおう)決戦前に突然彼がやってきて、懇願してきたんだ。『こんな力はいらない。怪人やめたいです』とね。
ゼノクは怪人から人間になるための処置をすることになったよ」

「しょ…処置?」
鼎、かなり困惑してる。
「紀柳院は外科手術みたいなものを想像したみたいだが…全然違うよ。
ある特殊な武器で釵游を斬ることにしたの」


「特殊な…武器?」
「そ。僕が調整に調整を重ねた特殊なブレードでズバーっと斬ったの。釵游は斬れたが痛みもなく、傷もない。『怪人の能力だけ』が木っ端微塵になくなったわけ」

「ず、ズバーっと?」
鼎はどう反応していいのか、わからない。一緒に聞いてる桐谷も困惑してる。


「…あれ?2人とも困惑しているか…。無理ないか…」
「長官、ゼノクの技術は見せた方が早いと思いますが。例の特殊なブレード、見せたらどうですか?」

西澤が呟いた。蔦沼は立ち上がるとある場所へ案内した。それは研究施設にある、とある部屋。


「ここにその特殊なブレードがあるんだ。ちょっと待っててね」
蔦沼はカチャカチャと何かの箱を開けた。見た感じ、ブレードを収納している細長いケースはジェラルミン製か?


蔦沼はケースの中から短めの対怪人用ブレードを出してみせた。

「これが特殊なブレード・境境絶呀(きょうきょうぜっか)。怪人を人間にするために開発・調整に調整を重ねた代物だよ。
これはかなり特殊だから怪人を斬っても肉体は斬れないの。斬れるモノが違うからね」


ゼノクの技術はとんでもないところまで来てる…。
だから狭山は身体能力はそのままに、人間になったんだ。

「このブレードは戦闘用じゃないから、紀柳院も使えるよ。浄化に似ているかな」
「このブレードの名前は何かしら意味はあるのか?」


「『境目を絶つ』的な意味を込めている。怪人の能力を絶つ的な?」
「だから斬っても斬れないのか」
「そういうこと」



ゼノク・隊員用休憩所。
二階堂は狭山と話していた。

「狭山さんってなんか冷めていますよね。気のせいですか?」
「冷めてる…?俺が?」

狭山は自覚がないようだ。


「狭山さん、槍さばきすごいですよ。見とれてしまいます」
「二階堂だってその義手の使い方、すごいじゃないか…。長官に似たのかな、使い方…」

「まぁ、蔦沼長官の戦闘スタイルを参考にしてますからねー」



鼎と桐谷はゼノク館内を歩いている。

「狭山の事実が聞けて良かったが…あのブレード、何かしらありそうだな」
「境境絶呀、すごい名前ですよね。ネーミングセンスは長官のものでしょうか…」
「そんなの、どうでもいいだろうに」

鼎の反応はどこかそっけない。



「…どうします?帰りますか?まだ本部に戻るには時間が余っていますが…」
桐谷が切り出してきた。

「そうだな…。ゼノク隊員に会っても二階堂達一部しか喜ばないだろうし…。
しばらく館内を見て行くか」
「そうしましょうか」



本部・司令室。


「鼎のやつ、順調かな〜」
「何ヘラヘラしてんだよ、室長」

御堂が宇崎に突っ込みながら入ってきた。


「鼎のやつ、今日はゼノクだっけ」

「そうだよ〜。和希、お前寂しいの?」
「んなわけないだろが!」
「またまた〜。顔、赤いぞ?やっぱり気になってんじゃないか〜」

「からかうのはやめろ」
御堂、宇崎の玩具にされて不機嫌に。このやり取り自体が久々だが。



「室長、なんでまた鼎を司令補佐にしたんだよ。他にも何かあるだろ」
「色々と考えたんだけどさ…鼎に研究助手は不向きだし、デスクワーク向きじゃないのは明らかだろ?
これは鼎本人も言ってた」

「…で、悩みに悩んで『司令補佐』ってわけか」
「逆に世間の注目を集めてしまったのは誤算だった…。鼎には申し訳ない」

「そりゃ『仮面の司令補佐』って話題性十分でしょうが。ようやくほとぼりが冷めたけどよ。
しかも本部では女性の司令に近いポジションはいなかったから、余計にな…。室長、あの噂は本当なのか?鼎が『後の本部司令候補』っての」


なんで和希がそれ知ってるんだよ?鼎本人が言ったとは思えないし…。


「いやー、今はなんとも言えないな〜」
「ごまかしても無駄だぞ、室長…」





番外編 (下)へ続く。


無題


話題:おはようございます。
昨日の拍手14個ありがとうございます。昨日は風呂だったんで、今朝は洗濯からの風呂掃除コンボで疲れた…。
荒れるのは今夜からみたいですね。今のところは晴れているんだが…。


なぜか今日はバリバラが気になる…。滅多に見ないよ。今回のねほりんもちょっと気になるかも。ねほりんは気になる回しか見ない。


確かに言われてみればなんでドラマの障害者役、健常者なんだ。
これ言われないと気づかないやつだわ…。盲点だった。

今期ドラマだと「星降る夜に」と「リエゾン」が該当してるんではないのかと…。
リエゾンは発達障害の医者が主人公なんだっけ。研修医もそういう設定なんだっけか。



自己満小説番外編、本編の補足と補完と書いておきながら補完されてない部分が…。
なんで敵幹部の釵游(さゆう)が人間となり、「狭山蓮」になったのかって部分が全然補完されてない。

狭山は補完しないとならんよな〜と。


前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2023年01月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
アーカイブ