話題:私の車
またまたトヨタに行った神田です
登録に必要な住民票と残金を持参して
M美も一緒
1人で行くつもりで、今日も送って行けないゴメンヨと言う前に、「こないだ先輩♀に送ってもらったんだけど、軽自動車に慣れちゃったのか、大きな車は落ち着かなかった。だから送って下さい♪」と言われてしまい、調子が狂っちまった
白い外車は先輩♀だったのかという安堵感に加え、軽自動車の良さをわかってくれた嬉しさもあって、家に届けるのが若干遅くなる気はしたけど連れて行くことにした
車屋さんに行くよと言ったら喜んだしね
俺の世界を知りたいみたいだった
用が無い人にとっては必ずしも楽しい場所ではないような気がしたが、行きたいって言うのを無視するのもどうかと思ったし
まあそれはいいとして、トヨタには暗くなる寸前に到着した
M美には車を買ったとは言ってなかったんだよね
書類を持って行くだけと言ってあったため、テーブルの上に札束を出した時はたいそう驚いていた
トヨタマンが指をナメながら札を数え始めた時に、「また買ったの?」とM美が小声で聞くのでYesと小さく答えた
ほら、札を数えてる人の前で大きな声で話すと気が散るかなと思ったから
「何買ったの?」と今度は普通の声でまた聞くから、窓を指差して、あそこの銀色の四角いやつだよ、と小声で教えてやった
するとM美ったら、ガタンと椅子を動かす音をさせて立ち上がり、「どれ?」と割と大きめの声を発した
トヨタマンが、「やべぇ、わかんなくなっちゃった」と呟くのが聞こえた
あとでちゃんと教えてやるから、今は大人しく座っててくれと耳元で言って、アホ女の肩を下に押して椅子に座らせたが、今度はキョロキョロしまくるもんだから、静止させるのに苦労した
その間、トヨタマンは耳がダンボになっていながらも、必死こいて札を数えていた
俺は笑いを堪えるのが大変だった
その後、やっと札を数え終えたトヨタマンが領収書を書いている間に、M美を銀色の車の前へ連れて行った
彼女がハイゼットカーゴを見た時の第一声は「え…、何?コレ」だった
人を快適に運ぶ車ではないので、嫌な気持ちにさせちゃったかなと思ったが、「ベッドも運べそうじゃない?」と弾んだ声を出した主を見た時ニカッと笑っていたので安心した
気に入ったかどうかはわからない
でも彼氏が買った車にイチャモンをつけるような女ではないのだなと、新たな一面を発見できてよかった
帰りの車の中で、あの車が来たら寮に住むと言うと、「だったらIKEAとか行って必要な物買お?」と言っていた
「本格的に買う物リスト作らなきゃね」とも
コンビニに寄って温かい飲み物を買い、車の中でそれを飲んでいる最中、「神田君が夜勤の時、私、あの車で帰っていい?」と言った時は驚いた
M美は続けて、「やっぱり人に送ってもらうと気を遣うし、運転が下手くそでも文句言えないじゃない」と
(ふむふむ…)
「あと、私の方が先に上がった時に食べ物を買って来てあげられるし」と嬉しそうに言った時にはまた驚いた
自分が楽しめる車を買ったつもりだったんだけど、この女も楽しくさせてしまった…のだな
まさに想定外ではあったが、貶されるよりはいいし、未来が少しだけ拓けた感じがした
「車の名前カゴちゃんにしよう?」と言った時にはコーヒーが口から飛び出てしまった
名前なんて付けなくていいだろうに…なんて思いながらハンドル中央のエアバッグの部分に飛び散ったコーヒーをティッシュで拭いてたら、「銀色だから銀次郎でもいいかな…」と独り言のような声が聞こえてきた
もう何でもいいから勝手に名付けてくれよと思った神田でした