西暦20××年。
月面に人類のあらゆる叡智を超える物体が発見された。
「ムーンセル・オートマトン」と呼ばれるその物体は
あらゆる事象をコントロールすることが可能な力を持つことが後に判明する。
意志ある者が持てば世界さえも掌握できる万能の願望機「聖杯」に等しい
この物体を手に入れるため世界各地の組織・勢力が「ムーンセルオートマトン」の
作りだす霊子虚構世界「SE.RA.PH」にアクセスし、「ムーンセル・オートマトン」が
自身にふさわしい担い手を選別するために行う「聖杯戦争」へと参戦する。
芳樹と満月はアサシンのマスターを探るべく、街中を歩いていた。
芸能人である2人が街中を歩いている姿に通行人達は視線を向けた。
「……………物吉、どう?」
「……………アサシンは気配遮断スキルを持っていますから、探るのが大変ですよ。
でも何か不思議なんですよね。」
「不思議?」
「…………アサシンと思しき気配が数十に別れているんです。」
「………………どゆこと?」
「アサシンは分裂しているってことかな。それだったら納得もいく。」
芳樹の話に満月はなるほど、と呟いた。
「…………………分裂しているということは各々が独立した人格を持っているってことなんですかね?」
「解離性同一性障害を持っている英霊とかなら、合点が行くけどね。
……アサシンはほら、ハサン・サッバーハしか召喚されないし。
一部例外もあるけど。」
「…………歴代のハサンの中から誰かが呼び出される、でしたよね。」
「うん。」
「………………あ。」
不意に物吉が足を止めた。それにつられて芳樹と満月も足を止める。
「…………誘ってますね。」
「……………人気のないところで勝負しようっていうのか。」
「……………どうします?」
「…………行ってみよう、満月ちゃん。いざとなればあれで和泉守達を呼び出せばいいから。」
「はい。」
続く。
雄叫びと共に現れたのは、巨躯で仮面を被った半裸の男性だった。
しかし、その頭部には角が生えている。
「…………………サーヴァント、か?」
「ALAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「……そうみたいだよ、兼さん。バーサーカーみたいだ!」
「…………言われなくても見ればわかる!」
バーサーカーは手に持っているハルバートを和泉守と堀川に向かって投げた。
「LAAAAAAAAAAA!」
「おおっと!」
「…………随分と古典的な攻撃だね、バーサーカー!」
ハルバートをかわした2人はアサシンの気配が消えたことを悟った。
「……どさくさに紛れて逃げたか。」
「追いかける?」
「………いや、やめとこうぜ。気配遮断のスキルを持っている相手を追いかけるなんて芸当、できないしな。
………それにこいつが私達を逃がすと思うか?」
「………だよね。」
「はぁぁああああああああああああ!!」
その時、頭上からセイバーが不可視の剣をバーサーカーに振り下ろした。
バーサーカーはハルバートを拾い上げると、不可視の剣を受け止めた。
「セイバーさん!」
「ったく、来るのが遅い!」
「すみません、遅くなりました。………アサシンは?」
「逃げられた。代わりにこいつが現れたが。」
「………バーサーカーですか。しかし、この角は……………。」
「………どう考えてもアイツだよな………。」
「………うん、もっとも有名な反英雄って言えばいいのかな。」
「………………ミノタウロス。」
「……アステリオスが正しい名前だけど、どちらかと言えばそっちの方が有名だよね、兼さん。」
「………ああ。」
「……ギリシャ神話に出てくる、迷宮の主ですか。」
「……………今ここで宝具を使われたらまずいな。」
「そうですね。」
「……………ALALAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
ハルバートを手にし、バーサーカー…………ミノタウロスことアステリオスは3人に襲い掛かった。
続く。
「………今日は大変だったな。」
テラスのチェアに座っていた芳樹は智仁からグラスを受け取った。
「……強盗団も馬鹿だったな。守り刀に勝てる人間なんていやしないさ。」
「そもそも守り刀は付喪神の類だからな。
曾ばあさんの卓越した技術と、美桜さんの霊力が合わさって生まれた物だから。」
グラスを軽くぶつけ、乾杯した2人は話を進める。
「……………そういえば、もう後1年と少しだったな。」
「満月ちゃんとの結婚か?」
「そうさ。それ以外に何があるって言うんだ。」
「爺さん達、こぞって豪華な挙式にすると思うがね。」
「………なんせ見目麗しき美丈夫と令嬢の結婚式だからな。
テレビ中継もしたりするかもしれないぞ?」
「…………よしてくれ。皇室に喧嘩は売りたくない。」
「誰も買わないから安心しろ。…………………しかしものの見事に12という数字に縁があるな、お前達は。」
「そうか?」
「ああ、12月4日生まれと4月12日生まれ、しかも12歳差。」
「………………逆にそこまで揃うと恐ろしいな。」
「まあ、別に聖なる数字ってわけでもないから深くは考えない方がいいぞ。」
「…………呑気だと思って…………。」
「………あ、芳樹さん。智仁様。こんなところにいましたか。」
「やあやあ、満月ちゃん。どうかしたのかな?」
「酒の肴を作ったんだ、食べるだろ?若旦那様、智仁様。」
「おぉ、ちょうど欲しかったところだ。気が利くな、厚は。」
「お嬢様もお茶でよければすぐに用意するぜ。炭酸ダメだったもんな。」
「…………ありがとう、厚。」
こうして、夜は更けていく。
続く。
「……じゃあ、ここがマグノリア王女の部屋ね。」
「本当に綺麗なお部屋ですわね。………使ってもよろしいんですの?」
「もちろん。ここ元々死んだおばあちゃんの部屋だったから、使ってくれるとおばあちゃんも喜んでくれるし。」
「……………そうでしたか。」
「とりあえず、服とかについては智恵ちゃんのママが用意してくれるから。」
「えっへん。私のママはアパレルショップの店長でデザイナーだからね。」
「ええ、センスも素敵ですから問題はありませんわね。
…………で、本題に入りましょうか。」
「本題?」
「サタトスをどうするか、ですわ。
フォルトゥナ王国の継承の儀を狙ったということは、マグノリア王女を狙っているも当然。
遅かれ早かれ、人間界の日本という場所を特定して私達の家に襲撃を仕掛ける危険性もありますわ。」
「………た、確かに。」
「フォルトゥナ王国で王女の姿が見えなかったら、人間界にやってくるよね。」
「マグノリア王女、対策は何かありませんの?」
「………先代の王であった父はプリキュアと呼ばれる方々の力を借りて、
サタトスを封印したと、執事長が仰っていました。」
「………プリキュア?」
「はい。フォルトゥナ王国に伝わるタロットにちなんで最大で20人いたそうですわ。
サタトスはフォルトゥナ王国の言葉で悪魔を意味しますの。」
「…………悪魔と死神を除いて20人ってことか。」
「何で?」
「だって悪魔と死神ってマイナスなイメージが強いじゃない。」
「ええ、確かに。ちなみに死神のことをフォルトゥナ王国ではモルテといいます。」
「………………じゃあ、私達も20人近くのプリキュアを探さなくちゃならないの?」
「最大で20人だって話でしょ。
最小でも3人ぐらいじゃない。」
「………あ、なる。」
「…………ちなみにカードの大半はフォルトゥナ王国にありますが、4枚だけ城にありました。」
「見てもいい?」
「ええ、もちろんです。」
そういうと、マグノリアは4枚のカードを懐から取り出した。
続く。