「……お、和泉守に堀川、物吉じゃないか。」
「鶴丸、久しぶりだな。」
「お久しぶりです、鶴丸さん!」
「元気にしていましたか?」
「ああ、まぁな。元気も何も風邪すら引いていないがな。」
「………こら待て、鶴丸。俺を置いていくなんて酷いな。」
「何を言うか。夜中まで飲み会しておいて、良く言うよ。智久様。」
「え、青桐智久さん!?」
「うっそぉ、綿貫さんと悪友の!?」
「来ていたんですか!?」
「何だ、智久様。来ていたのか。」
「随分と元気なさそうですけど………。」
「大丈夫ですか?」
「気にするな。昨日、ドラマの打ち上げでちょっと飲み過ぎただけだ。」
「………ベテラン俳優達には気を遣うわ、
後輩の前ではカッコ悪いところ見せるわけにはいかないわで
疲れるんだよ。」
「お、お疲れ様です、青桐さん!」
「あの、スポーツドリンクで良ければ私持っていますので!」
「や、休んだ方がいいんじゃ……。」
「うん、こんな可愛い子達に慰められるとは俺、ツイているな。」
「はいはい。青ざめた顔でホールに入るわけにもいかないから、
スポーツドリンクでも貰って、気持ちを切り替えしてくれ。」
「悪いな、ドリンク貰って。お礼にサインでもしてあげよう。何か持っているか?」
「え、嘘やった!」
「ええっと、あ、ミニ色紙なら私持ってる!複数枚あるよ!」
「ありがとうございます、青桐さん!
ありがとう、彩愛!!」
サラサラ、とサインをミニ色紙に書いた智久ははい、と3人に渡した。
「ありがとうございます〜。」
「大事にしますね!」
「家宝にします!」
「くれぐれも転売だけはしないでくれよ。
……あー、しんどい。」
「あの、青桐さんは誰を応援するんですか?」
「もちろん、満月ちゃんに決まっているじゃないか。
他の奴らには悪いけど。」
「……へ、へぇ………。」
「満月ちゃん一択なんですね。」
「な、なるほど………。」
「芳樹の婚約者じゃなかったら、俺がかっさらっているところだったんだけどな。
でもまあ、何というか5人のお兄ちゃん達がうるさいからなぁ。」
「気持ちはわかります。私にも兄がいるんですけど、シスコンなんですよ。」
「彩愛、そうなの?」
「うん。お兄ちゃんが3人いるんだけど、私が彼氏を連れて来ようものなら
剣道で勝負して、勝ってからまずは交換日記からしてくれって言うんだもん。」
「お兄ちゃん達のお眼鏡にかなう人じゃないとお付き合いできないんだ………。」
「そうなんだよねぇ………。」
「そりゃ大変だな。
でもまぁ、綾人達も自分のお眼鏡にかなう人間じゃないと友達から始めてくれないからな。」
「満月ちゃん、大変ですね。」
「小さい頃は虚弱体質だったからな。今はそんなことないけど。
なおかで心配をかけていたから余計にだ。」
「あ、そっか。青桐さん、高校時代からの同級生だから満月ちゃんのこと
赤ちゃんの頃から知っているんでしたね。」
「そうそう。でもって智久様は唯一若旦那様達を止められる存在だからな。
家族以外で。」
「若旦那様も、綾人様達もお嬢様のことになると暴走しがちになりますからね。」
「……と、話が長くなったな。さて、そろそろ開演時刻だ。」
「あ、はい!」
続く。