………そして、迎えた幕末天狼傳初日。
「…………よし。準備はいいか?」
「もちろんだ。」
「楽しみだねー。」
「ホントに。」
「………あ、結構並んでるね。」
「物販もあるし。」
桜庭市営文化ホールには刀ミュ目当てでやってきた観客達でごったがえしていた。
「…………あ、綿貫さんじゃない!?」
「嘘、姫宮5人兄妹が揃ってる!」
「………やっぱ、妹絡みになると仕事を休んじゃうんだね………。」
ヒソヒソと話をする観客達をよそに芳樹達は物販コーナーで品物を買い始めた。
「………まあ、ペンライトは仕方ないけど野郎の缶バッジはいらないな……。」
「でも清光出たら嬉しいしなぁ…………。」
「ブロマイドは買おうよ、ブロマイドは!」
「……お前ら、ホントにシスコン&ロリコンだな……。」
「やかましいわ、智久。シスコンで何が悪い。」
「どうでもいいけど、悩み過ぎるなよ。次つっかえているんだから。」
加州清光のブロマイドとシュシュを買った芳樹達は缶バッジのガチャに挑んだ。
「……うげぇ、誠か。」
「………こっちは政宗。」
「俺、志鶴さん………。」
缶バッジを見た綾人達はガクッと項垂れた。
「…………芳樹と智久は?」
「俺、満月ちゃんだった。」
「俺もー。」
「よこせ!」
「交換なら断る!姉貴からも頼まれているんでな!!」
ぎゃんぎゃんと騒ぎ始める6人を観客達は暖かい視線で見守り、スマホで写真撮影をした。
「……………これはさすがにちょっと騒ぎすぎですね。」
「仕方がなかろう。自覚が薄いんじゃ。」
「奥様、どうしますぅ?」
鶴丸国永、小狐丸、今剣の言葉に美穂は頭を抱えた。
「………他人の振りをしたいんだけどできないのが事実なのよねぇ……。
もう、貴方達!騒ぐのもそこまでにしておきなさいな。」
美穂がパンパン、と手を叩くと綾人はため息をついた。
「………美穂義姉さんには頭があがらないねぇ、綾人兄さん。」
「抓るぞ。」
「開演時刻までまだ時間があるから、適当に潰しましょう。」
続く。
「………あ、長曽祢兄ちゃん!皆、お疲れ様!」
「…………闇呪は1匹だけだったのか?」
「ああ、そうだ。1匹だけだった。」
「お嬢様、心配性だからねー。周辺見てみたけど、闇呪は見当たらなかった。」
「………まぁ、鷹の死骸を何匹か見かけたから、業者さんに任せたけど…………。」
「お疲れ様、5人共。大変だったでしょう?」
稽古を終えた満月が5人に声をかけた。
「お嬢様、堀川が頭を撫で撫でして欲しいって。」
「いやだから、それはお嬢様が小さい頃の話でしょって。」
「……え?して欲しいの?」
「お嬢様、堀川のプライドがズタボロになるからやめてあげな。」
「やだなぁ、ノッただけだよ、和泉守。」
「………へぇ、ホントに刀の名前を襲名しているんだね。」
誠の言葉に満月はそうなんです、と言った。
「刀派や刀種ごとに分かれているパターンが多いですけどね。
土佐組とか琉球組とか、地方ごとに分かれているパターンもありますよ。」
「へぇ、じゃあ三条の刀もいるんだね!」
「そうですねー………、意外としっかりしているというかしていないというか………。」
「ぷっ、何それ………。刀剣乱舞と何ら変わらなさそう………。」
「あ、いやいや。女性陣もいますよ?」
「(守り刀には性別がないんだがなぁ………。)」
「………長曽祢さん?何考えていたんだ?」
「別に何でもない。……それよりも稽古は?」
「順調に進んでおります。衣裳合わせとかが大変だけど、まあいつものことだから。」
「お嬢様、ちょっといいですか?」
「はいはーい、今行くよー!」
続く。
鳥型の闇呪は得物に目を光らせると、堀川めがけて突進してきた。
「何で僕!?」
そう叫びながらも、堀川は刀を振り下ろした。
……だが寸前のところで、闇呪は方向転換をし、続けて安定に狙いを定めた。
「僕に狙いを定めるなんて、良い度胸しているじゃん!!」
「あ、ずるい!!」
ヒュン、と清光が後ろから闇呪に突撃をかました。
闇呪は清光の攻撃をかわしたものの、すべてをよけきれず尾先が切れた。
雄叫びをあげた闇呪は清光めがけて、翼を羽ばたかせた。
「………鷹の天敵は、同じ鷹か人間のどちらかしかいなかったな、長曽祢さん?」
「……ああ。だが生憎と俺達は鷹の使い手じゃない。
使いこなすよりも殺す方が適任なんだけどなぁ………。」
「まぁ、確かに私達は手先が不器用だからな。
若旦那様にも言われたっけ。
『お前達はモノを破壊することしか知らないのか』って。」
「………それを今この場で言うか、和泉守。」
「まあ、何ていうか………そうだな、この場で言うことじゃなかったな。」
「ちょっと、そこ!
ただ突っ立っているだけじゃ、給料泥棒になるよ!?」
「ちゃんと動いてよ、2人とも!」
「んじゃまあ、行きますか……。」
「おう!」
5vs1という状況下で闇呪は5人に囲まれた。
「悪いがコンビネーションは守り刀の中でも粟田口派と良い勝負をしているんだ。
変に思わんでくれ。」
そういうと長曽祢は闇呪に目にもとまらぬ一撃を入れた。
「そういうカッコいいところ、蜂須賀にも見せてやれば?」
「同感!!」
続いて、清光と安定が同時攻撃をする。
翼を斬られ、残った翼で空に羽ばたこうとする闇呪であったが和泉守と堀川にはばかれた。
「悪いな、お嬢様の命令なんだ。通行人が来る前にとっとと片付けさせてもらうぜ。」
「僕も結構、邪道でね。」
「………堀川ぁ、ゲームの台詞をそのまま言うのはアウトだ。」
「ええ!?」
長曽祢に突っ込まれて、堀川は少しだけ凹んだ。
「……でもこのメンバーの中で闇討ち暗殺得意なのお前なんだけどなぁ。」
「キレたら怖いんだよね、堀川。」
「うん。一期さんも怖いけど、堀川も怖い。」
「………はいはい。トドメ刺すよ。」
有無を言わさず、翼をもがれ地面に落下した鳥型の闇呪に堀川はトドメを刺した。
「今日の誉は堀川ー。」
「後でお嬢様に撫で撫でしてもらえれば?」
「それ、お嬢様が小さい頃の話じゃない。」
続く。
「………いるな。」
長曽祢の言葉に4振りの守り刀達はコクリ、と頷いた。
桜庭市営文化ホールの周辺を散策しながら、5振りは闇呪の気配を探していた。
「お嬢様の勘は当たるからな……。」
「ESPの集大成とも言える眼をお持ちだから、当然と言えば当然だけどさー。」
「長時間使用はできないのと、たまに自分の意志とは関係なしに発動する時があるから
凄い不便だよね。」
「………お前ら、お嬢様の前で座敷童とか言うなよ?」
「それは言わないよ。」
「絶対言わない。」
「長曽祢さん、心配性ですね。」
「ホントだぜ…………。」
人気の少ない時間帯故に、通行人はあまりいないがそれがかえって不気味でもあった。
「…………何事もなければいいのだが…………。」
長曽祢がそう言った時、風もないのに街路樹の幹が不自然に揺れた。
「…………来たか。」
5振りが街路樹を見ると、何枚もの翼を持った黒い物体が地面にずちゃ、と落ちた。
「………鷹でも食ったのか?」
「……翼の数を見る限り、結構な数の鳥を食ったんじゃない?」
「………全員、抜刀用意!」
長曽祢の号令で5振りは刀を召喚すると、鞘から刀身を抜いた。
続く。
今日から、明後日の23日までの3日間。
東京に行ってきます。
真剣乱舞祭………らぶフェス2022を観るためです。
生の公演を観るのは、歌合乱舞狂乱の愛知公演以来、ですね。
いやはや、何ていうかホントは千秋楽も生で観たかったんですけど
そこはまぁ、ライブビューイングで我慢我慢。
はぁ、楽しみです。テンションあげあげです。
お母さんと一緒に行ってきますです。