鼎の対怪人用ブレード・鷹稜(たかかど)が特殊なものだと判明。
禹螢(うけい)に奪われた鷹稜を奪還するべく、ゼノクの異空間ゲートがある部屋で蔦沼から話を聞かされることに。


「長官、鼎さんのブレードが特殊ってどういうことなんですか?鼎さんの『均衡が崩れ始めている』ってどういう意味?」


ゼノク・異空間ゲート部屋の扉の前で晴斗は蔦沼に聞いていた。


「君たちには話してなかったね。紀柳院の鷹稜のこと。あれはただのブレードじゃないんだ、バランスを保つために作ったの」
「バランス?」

「能力と身体のバランスのことだよ。彼女の特異な能力が奪われた今、バランスを保てるものは鷹稜のみ。それを最初から想定して作ったのさ」


最初から想定して作った!?


「異空間に行く前に助っ人を連れてきたよ」
蔦沼はある方向を示す。そこには支部の月島と鶴屋が。西澤が説明。


「禹螢は怪人態になると、電子機器に介入出来ることが判明しました。この間、紀柳院がやられ救助されるまでかかってしまったのがこの能力。
通信にノイズが入り、通じなかったのはこのせいです。本部司令室も妨害に遭っています」
「…どうすんだよ、妨害されたら。通信出来ねぇぞ……」

御堂は気になっている様子。


西澤は付け加えつつ、ある動物を見せる。


「この子を連れて行って下さい。訓練された鷹です。役に立つはずです」
「鷹ぁ!?」
「人懐っこいので襲いませんよ。命令を出せば攻撃可能です。この子はゼノクと異空間を行き来出来るように訓練しましたから。偵察用に連れて行ってね」


動物までも訓練されてるゼノク、恐るべし。


西澤はゲートの重い扉を開いた。扉の向こうは何やら淡い光のもやもやした空間が見える。

「ゲートの扉は開けておきます。異空間とこの世界が通じるゲートは他にもありますから。
ゼノクのゲートはそれの1つに過ぎない」
「異空間から帰る時、道祖神やお地蔵さん、風車を目印にすればゲートは見つかりやすい。あの異空間には本来、日本的なものはないからね〜」


じゃあ誰が目印置いたんだよ!?
蔦沼は何か言いたげにしてる様子。

「御堂、ゲートへの目印を置いたのはファーストチームのメンバーだ。異空間の研究もしていたの。
あちらの人達にわかりにくいようにしてね」


晴斗・御堂・時任・桐谷・月島・鶴屋の6人はいよいよゲートの中へ。
蔦沼と西澤は隊員達を見送った。

「絶対に深入りはするなよ!鷹稜奪還だけすればいいからねー!帰ってこいよ〜」


「深入りはするな」とは?



異空間。御堂達6人は森の中にいた。異次元とあって変な生物や不気味な鳴き声が聞こえてる。


「なんか気味悪いっすね」

時任はあっけらかんとしてる。
「月島と鶴屋はなんでまた助っ人に…」
御堂の問いに2人は答えた。

「広範囲攻撃が出来るから抜擢されまして…。私の場合は楽器型武器さえ変えれば電子機器の介入は避けられます」
「俺も月島と同じ理由だよ」


助っ人2人はネオメギドに有効性のある攻撃スタイル。



6人は森を抜け、集落らしき場所へ。そこは苔むした廃屋がある場所だった。

「なにここ、廃村?不気味だな〜」
「何のんきなこと言ってんだよ晴斗。敵がいつ出てもおかしくねぇんだぞ?」
「異空間とは思えない場所ですねぇ」
「桐谷さんものんきだな!!」


禹螢は隊員の姿を発見、襲撃にかかる。

「なんでこんなところにゼルフェノアの連中が?ま、いーや。このオモチャでな」

禹螢は鷹稜を抜刀、ヘラヘラしながら御堂に襲いかかった。御堂は銃で応戦。晴斗はその隙に鷹を飛ばした。


「皆さんお揃いで何しに来たのかな?」
「そのブレード、返して貰おうか」

御堂はギリギリと禹螢に迫る。禹螢はブレードでかなり攻撃的に切りつける。


「お前、あの仮面の女が大事なのか!?この刀、あの女から奪ったんだよ」
「てめぇ…!」

禹螢はネオメギドを複数出現させ、他の隊員達を翻弄。
月島はトランペット型の武器を鳴らした。衝撃波がネオメギドを襲う。管楽器型なら禹螢の影響は受けない。
鶴屋は特殊札で結界を展開、さらに起爆札でネオメギドを追い込む。2人のおかげでネオメギドは撃破。


晴斗も禹螢戦に加勢。

「御堂さんっ!」
「晴斗っ!こっち来んな!!」
「…え?」

御堂は明らかに圧されている。鶴屋は機転を利かせ、特殊札で御堂と禹螢の周囲に結界を展開。

「鶴屋さん、なんで結界張ってるの…?」
「今回の任務はあのブレードの『奪還』だ。この空間で『深入りするな』と長官が言ってただろ。御堂が『来るな』と言ったのはそういうこと」

「あくまでもあたし達は御堂さんのサポート役だかんね。暁くんはまだわかってない。この任務、急いじゃダメだよ。
きりゅさん、助けたいんでしょ?」
「時任さん…」


桐谷も晴斗に声をかける。

「私達は御堂さんの方針で動いていますから。
鼎さんのブレードは彼が必ず取り返します。ネオメギドはまた出てくるはずです。油断大敵。なぜならここは敵の本拠地がある空間、私達はアウェイなんですよ」


そうだった。ここは異空間。周りは敵だらけ。
味方は周りにいる人しかいない。


晴斗は偵察に飛ばした鷹を見た。そろそろ戻ってくるはずなんだが。
しかし、よくゼノクは動物を訓練させてるな〜と。訓練犬もいると聞いた。警察犬や軍用犬みたいなものなのか?



御堂は禹螢と激しい攻防を繰り広げてる。

「あの女、悔しそうだったよ。反撃出来なくて」
「てめぇ、鼎に何をした!?あんなにぼろぼろになるまで攻撃したのか!!」
「悪いかねぇ。俺は手段を問わないの」


御堂は禹螢が許せなかった。御堂の腕の中で見た鼎の素顔が脳裏を過る。

あいつ…泣いてた。雨なのか涙なのかはわからないけど、悔しそうにしてて。
鼎は負けず嫌いだからな…。あの敗北はショッキングだったに違いない。
これまで以上にない敗北だから。


俺のことを名前で呼んでくれたのは、あいつに何かしらの変化があったからなのか?
今はまだ意識が戻らないから聞けそうにない。

とにかく鷹稜を取り返さなければ!


御堂は鼎のブレードを持った禹螢と戦う構図になり、複雑に。
禹螢はついに怪人態へと変貌した。隊員達に緊張が走る。電子機器に介入されたら通信は遮断されてしまう。


御堂は禹螢怪人態がブレードを闇雲に使っていることに気づいた。
いや…鷹稜が反発してるのか?禹螢は鷹稜に振り回されているように見える。


晴斗は攻撃に鷹を使うことにした。事前に専用の笛も渡されている。当たり前だが新品のもの。
晴斗は笛を吹いた。鷹は禹螢目掛けて滑空→攻撃を仕掛ける。

御堂は晴斗を見た。
「御堂さん、足手まといにならないようにするから…」
「アシストサンキュ。おかげで戦いやすくなったわ。そろそろ本気出すから、鷹は退避させろ」
「え?あ、はい」


御堂の本気とは?
そういえば御堂さんの本気、見たことがない…。





第44話(下)へ続く。