「――で、なんで俺らが鼎も連れて都心に行かなきゃならねーのよ」
移動中の組織車両内。御堂は呟く。組織車両内には御堂・鼎・鷹稜(たかかど)・彩音・桐谷が乗車。桐谷が運転手をしている。
もう1つの車両には晴斗達が乗っている。
「元老院の長が動いたからです。彼はもう異空間にはいない」
「鷹稜〜、だからといって鼎を連れてくのはどうかと思うんだが?室長、よく許可出したよな」
――数時間前。鷹稜は本部・司令室に雪崩れ込んできた。
「鷹稜、お前一体どうしたの!?雪崩れ込んでくるなよ!!」
宇崎はかなり驚いた様子。
「元老院の長が動いたんです。鼎さんの奪われた能力を取り返すをチャンスが来たんですよ!!」
「…鼎の体調はどうなの?」
「小康状態です」
小康状態…か。攻撃は無理かもしれないが、あれなら行けるだろう。
宇崎はあるジェラルミンケースを出した。
「鷹稜。これを鼎に渡してくれ。攻撃は出来ないが、戦意喪失させることは出来る」
鷹稜はケースを開ける。その中には近未来的なデザインの籠手が。
「籠手!?」
宇崎は淡々と説明。
「その籠手、細長い光るパーツがあるが…こう…腕をクロスさせると発動して戦意喪失させることが出来んのね。広範囲に出来るから鼎に装着させてくれ。
鼎の奪われた能力を取り返すにはこうするしかない」
――都内某所。そこには多数のネオメギドが。鳶旺(えんおう)は計画実行のために都心をゲリラ的に攻撃。
「破壊しなさい」
都心ではパニックになっていた。突如出現した大量の怪人は容赦なく人々を襲撃、街を破壊する。
鳶旺が出現した地点では昼間なのに辺りは真っ暗になっていた。
「おい、あれ…」
御堂は異変に気づく。昼間なのに辺りは夜のように真っ暗。
鼎の両腕にはあの籠手が装着されている。
「鳶旺がいる……」
「鼎、まだ動こうとするな。鳶旺はどこにいる?」
御堂は車窓から注意深く見ていた。双眼鏡で見ていた彩音は気づいた。
「あそこ!スカイツリーの近くに変な空間が出来てる!」
「スカイツリー!?」
車内はざわついた。確かにスカイツリーの上空に不気味な空間が。よく見るとそこに人影が浮いている。
その人影には枝分かれした羽のようなものが。
「やっぱり鳶旺だよ!桐谷さん、車をあまり近づけないで停めて!近すぎるとヤバいよ」
彩音は慌てて指示を出す。
「了解しました」
晴斗達を乗せた車両も停車。隊員達はスカイツリーから離れたある地点で降りた。
御堂は銃を構えつつ、呟く。
「ここら一帯、怪人にやられているな…。鼎、お前は鷹稜と一緒に行動しろよ」
「…わかってる…」
隊員達は御堂主体でゲリラ的に襲撃された街を進む。目指すはスカイツリー周辺。
「鼎さんは無理しないで下さい。ここは私が行きますから」
「鷹稜、すまない…」
「謝る必要はないですよ。私はあなたの相棒なんですから、いくらでも尽くします」
「…お前…」
「鼎さんはその籠手で怪人の戦意を喪失させるんです。能力を取り返すにはそれをしなくてはならないですよ」
「わかってるよ…」
怪人達は隊員達を見つけるなり、攻撃を仕掛けるが、鼎は腕をクロスさせ籠手を発動。
籠手の細長い光るパーツが発光→広範囲にバリア状のものが展開、それを浴びた怪人達は戦意喪失。
鼎は驚いていた。
なんなんだこの籠手は…!かなりの広範囲ではないか…。ネオメギドが全て戦意喪失してる…。
鳶旺はゼルフェノア隊員を発見。
「邪魔はさせるか」
鳶旺は枝分かれした羽のようなものを展開→隊員達を襲う。
晴斗は恒暁(こうぎょう)と共に鳶旺に挑む。
「晴斗、高く跳べ!」
「えええっ!?」
「俺がアシストするからとにかく高く跳べってんだよ!!」
「わかった!」
晴斗は恒暁の無茶ぶりに持ち前の身体能力で乗り切ることに。晴斗は高く跳び、恒暁がアシスト→さらに高く跳躍→一気に高所へ。
「鳶旺ーっ!!」
鳶旺は2人に攻撃。2人は連携でなんとか切り抜けるも、ギリギリ。
鳶旺、つえぇ…!
「あの女を連れてきたのか、愚かなり」
その間。鼎は鳶旺の影響を受け、体調に異変が。
「鼎さん、大丈夫ですか!?」
鷹稜が駆け寄る。
「大丈夫じゃ…ない…」
鼎はかなり咳こんでいるようだ。まさか症状が出たのか…こんな時に限って…。
「彩音!鼎を頼んだ。鷹稜が対応してるけど、追いついてないみてぇだ!」
御堂は咄嗟に指示を出す。彩音は鼎の様子を見た。
鼎を今すぐ搬送しないと…。でも鼎からしたら貴重なチャンスを奪うことになる…。
「鷹稜さん」
「なんでしょう」
「半径3q圏内なら鼎から離れていても動けるんでしょ!?」
「動けますが…主の生命エネルギーは危うい状態です。近ければ関係なしに動けますが」
搬送しないで私が処置するしかない…!あの車内で。
「彩音、どうする気だ?」
「車内で対応する。このままで終われないじゃない!鼎の貴重なチャンスを逃したくないの!」
鷹稜はこう言った。
「無茶言ってすいません。主の近くなら、生命エネルギーが弱まっても動けます。私も恒暁と合流します!」
鷹稜は高く跳躍した。
上空では晴斗&恒暁vs鳶旺の戦いが。
「私も合流します!」
「鷹稜!」
「私にだってプライドがあるんですよ…!主の能力を取り返すには私の力が必要だ。必要不可欠なんです!!」
鷹稜の声が力強くなっていた。鷹稜はマジックを派生させた攻撃スタイルで鳶旺を翻弄させる。
「奇術使いか」
鳶旺は冷めている。鳶旺は恒暁と鷹稜が人間化した対怪人用ブレードだとまだわかってない様子。
恒暁はいきなり肉弾戦で鳶旺をぶん殴る。晴斗は恒暁の効果で舞空術が使えてる。
鳶旺は恒暁の攻撃に一瞬怯んだが、無効化があるためか攻撃が効いてない。
「どうした?私に攻撃出来ないか」
「お前が奪った能力はお前のもんじゃねぇだろ!!」
恒暁、キレる。
一方、組織車両内では彩音が鼎を介抱していた。
明らかに体調が悪化してる…。
彩音は鼎から籠手を脱がせ、楽な体勢にする。
「鼎、やっぱり救護隊呼んだ方がいいよね」
「…頼む…。近くに組織直属病院はあるのか……」
「近くに組織直属病院、あったよ。鼎、しんどいかもしれないけど…もう少し待ってて…」
「私だってここで諦めたくはない…」
晴斗達は鳶旺の無効化に悪戦苦闘。
このままでは…!