都心が闇に包まれてから3日目。蔦沼が現場の中心地・スカイツリー周辺に到着。


「鳶旺(えんおう)はまだ出てこないのかい?」
「長官、そう簡単に出たら苦労しませんて」

北川がおいおいおい〜といった反応。



本部では鳶旺について協議中。司令室では合流した蔦沼・北川を加えて作戦会議の様相。


「宇崎、都心のあの闇について何かわかった?」
蔦沼はフランクに聞いてる。

「鳶旺が作り出したってことしかわからないですよ」
「闇…闇ねぇ。鳶旺が作り出した空間ってことは、あいつが支配してるってことか…。さて、どうするかな」
「長官、まったりしている場合じゃないでしょうよ…。闇はじわじわと首都圏に広がりつつあるんですよ、ほら」

宇崎はメインモニターを地図に切り替える。そこには都心が闇に包まれた範囲が示されている。


「始めはスカイツリー周辺半径3q圏内でしたが、やがて10q→そして今は都心を鳶旺が作った闇が飲み込もうとしてるんです」
「解説ありがとね。しかし、鳶旺の計画ってなんなんだ?闇と関係してるのか?」


そこに鐡がやってきた。

「あのジジイ、また来るから警戒しておけよ。鳶旺をギリギリ追い詰めたのはあんたか、蔦沼」
「そうだけど?君だって鳶旺を追い詰めたじゃないか。今は倒す相手が同じだろ?…そういえば君の部下はどうしたのさ」

鐡はめんどくさそうに答える。
「釵游(さゆう)と杞亜羅(きあら)は怪人辞めるのも、俺についてくのも好きにしろと告げてある。この戦いに部下を巻き込みたくねーのよ。
釵游は前から人間になりたかったみたいでな、あいつは怪人から人間になって今『狭山蓮』として生きてるぞ」


狭山蓮…?ゼノクにそんな人がいたような。蔦沼は西澤と連絡。

「狭山蓮?あぁ、人間になった元怪人ですよ。え?あいつ鐡の部下だったの?」
西澤も知らなかったらしい。

「杞亜羅はどうしたのさ」
蔦沼は相変わらずフランク。
「俺について行くってさ」



本部・休憩所。


御堂は4年前のことを思い出していた。それは任命式前のこと。


「御堂。今度の新人隊員に前例のないやつが入ってくるみたいだぞ」
誰だっけ。辞めた先輩が俺にそう言ってきた。

「どういう人なんですか」
「『仮面の女』だよ」


仮面の女?


任命式の時。御堂はその仮面の女を見る。彼女こそが「紀柳院鼎」だった。
後に御堂は鼎とマンツーマンになり、時折ぶつかりながらも彼女は成長していく。


「和希、どうしたんだ?ぼーっとして」

いつの間にか鼎が休憩所に来ていた。


「いや…お前が入ってきた時のこと、思い出しちゃって…。覚えてるか?お前任命式の時、酸欠起こして倒れただろ。介抱したの彩音と俺だったの」
「…覚えてる」

「お前が組織に入った当初、ゼルフェノアは今よりも荒れてたからなー。
鼎は陰湿ないじめのターゲットにされてたし。加害者は全員処分されたけどよ。お前…なかなか言えなかったんだろ、あの時」
「言えなかった…」

「今は状況もえらい変わったし、なんでも言えよな。力になる。鼎はなかなか言い出せない節があるみたいだかんな〜。そう、抱え込むなよ。
お前はさぁ…考えすぎなの。少しは気楽になれって。仲間もいるんだ。不安になるなよ」


御堂の言葉はぶっきらぼうだがどこか優しい。


「鼎…お前、その仮面姿のままでいいのか?」
鼎は少し間を置いて答えた。

「今のところは…な」


今のところは…。あの事件後、約10年間仮面生活をしている鼎からしたら素顔で生活する方がキツいのは確か。

聞かなきゃ良かったか…。



「気にかけてくれたのか、ありがとう」

鼎の仮面は表情なんてないのだが、どこか明るく見えた。前よりも鼎は素直になった気がする…。心を完全に許したのか。
完全に俺を信頼しているのがわかる。


「鳶旺はなかなか動かないな…」
「直に動くだろ。鳶旺の作った闇は首都圏に広がっているっつーし、『闇』を使って支配してんのは確かだ。問題はどうやってそれを打破するかだが、今までのやり方だと通用しねぇだろうな」

「和希もその見解か」



晴斗は恒暁(こうぎょう)と話をしていた。

「なぁ、恒暁。この戦い長引きそう?」
「ラスボス様がお出ましじゃないだろ。今までのやり方じゃあ効かないのは確かだ。
鳶旺は闇を拡大させて支配してやがる。光と闇は表裏一体…『光』が鍵かもね」



司令室――。


「鳶旺が支配する闇を打破するに、光をぶつけるのはどうなの?」

宇崎がなんとなく聞いた。蔦沼は「ふーん」という反応を見せつつ、答えた。

「その光、ただの光じゃ意味なくない?暁と紀柳院の人間化したブレードがどうも気になるところだよ。
彼らがなぜ人間化したのか、もしかしたら鳶旺を倒す鍵かもしれないが…どうだろう」


言われてみればなぜ、晴斗と鼎のブレードは人間化したんだ?
人間化したことで人間とブレードの絆は深まったが。


「彼らに直接聞く?」
「そんな暇ないでしょうよ、長官。いつ出てくるかわからないのに…って、なんか来た」
「え?」

蔦沼はモニターを見た。そこには鳶旺出現のマークが。


「ラスボス様、またお出ましだねぇ〜。なら僕が行こうか?」
「長官は行かないで下さい!トップがしゃしゃり出たらマズイでしょう」

宇崎の制止に蔦沼は動じない。


「以前、ゼノクで鳶旺と戦ってんだよ?あいつも気づいているはず。今度は怪人態で来るんじゃない?」



都内某所――。


鳶旺はさらに闇を拡大させている。そして大量の怪人を放つ。

「闇に支配されるがいい」



「長官、本当に行くんですか!?」
「行くよ。鳶旺を止めなければずっと暗闇のままだぞ」


ずっと暗闇のまま…?



闇に支配された異様な空間で、蔦沼は鳶旺と再び対峙することになる。