これは本編の後日談と過去が入り交じっています。ほぼ過去編。ナチュラルに残酷描写あるかもしれないので注意。



一般市民の菅谷恭平はSNSで知り合った鷲尾という男と喫茶店で合流。恭平に紀柳院鼎についての情報提供したのがこの男。


「あ…は、初めまして。菅谷と言います」
「君が恭平くん?いいから座って座って。君…知りたくて来たんでしょう?
ゼルフェノアの紀柳院鼎、いや…今は紀柳院司令補佐のこと」

鷲尾はどうやらゼルフェノアについて調べている男性。元はネットニュースサイトの記者だったらしい。


「あの記事見ました?12年前の怪人による連続放火事件」
「見ましたよ。なんですかあれ…悲惨すぎますよ…。だんだんエスカレートして8件目の都筑家だけ、完全にターゲットにされているあたり…」

「犯人の怪人は幹部クラスだと後に判明したのは知っているよね。現に倒されている。
怪人の名前は『飛焔(ひえん)』という炎使い。じゃないとあんな火力は出ない。蒼い炎も目撃されていたあたり、相当だよ」
「蒼い炎?」
恭平はぽかんとしている。

「通常の赤い炎よりも強力なものだったらしい。この一連の事件では全て蒼い炎が目撃されていた」
「…わ、鷲尾さん。本題に入りましょうよ。それと紀柳院鼎がどう関係してるんですか?」


鷲尾はしばし間をおいてから答えた。


「君…推測したんじゃないの?紀柳院鼎のこと。
…もしかして都筑家の娘が生存してた…とかね」
「俺も俺なりに推測してみました。なんかおかしいんですよね。
犠牲になった両親はすぐに死亡と速報が出たのに、娘だけ遅れて出たのがなんか…なんだろう。搬送時はまだ意識があったのかなーとか」


鷲尾はある資料を見せている。
「ある筋から入手した当時の事件の詳細だよ」


あ、ある筋って何!?


恭平は資料を見た。そこには生々しい詳細が書かれている。
怪人は放火前に両親を惨殺、娘だけは後でじわじわいたぶったらしくてどうとか。
その後に怪人は家に放火し、謎の爆発を起こした。

どうやら娘の悠真はその怪人が引き起こした爆発に巻き込まれ、全身火傷を負ったとかどうとか書かれている…。顔には大火傷を負い、搬送時は意識不明。


紀柳院鼎とあまりにも似ている…。

彼女は司令補佐に就任後、仮面の理由を世間に公表した際「顔に大火傷を負った」と言っていた。さらには「全身火傷の跡もある」とも言っている。
戦えなくなったのは、身体の火傷のダメージと蓄積された戦闘のダメージで満身創痍だということも。


恭平はあのことを思い出した。成り行きで鼎と言葉を交わした日のことだ。


「鷲尾さん、これ深入りしなくても良くないですか?彼女の正体なんて誰だっていいでしょう」
「ゼルフェノアは何かしら隠蔽してるとは思えないが、紀柳院に関しては不自然すぎるんだよ。都筑悠真と紀柳院鼎は何かしら関係している」


恭平は資料を次々見ていく。生々しい詳細を見て吐き気が来た。なんか具合悪くなってきた…。

「恭平くん、無理して読まなくてもいいよ。君には刺激が強すぎたかな」
「これ…あまりにも生々しすぎて…」

鷲尾は資料を鞄の中に入れた。どこからあんな資料取り寄せたんだよ…。


「当時の司令と隊長の名前はわかっている。北川司令と暁隊長だ」
北川司令と暁隊長?



本部・司令室。この日は北川が来ていた。鼎は補佐に慣れたらしく、以前よりはスムーズに出来ている。


「紀柳院、元気そうだね」
「北川さん、来てたんですか…」
「ちょいちょい来るからね〜」


北川はおもむろに鼎の手を見る。
「紀柳院、ちょっと手袋脱いで貰っていい?左手だけでいいよ」
「何をする気だ?」
鼎は身構えている。

「火傷の跡を見たいんだ。身体はだいぶ目立たなくなってきたはずだが…」
鼎は手袋を外した。手にはまだ火傷の跡が残っている。


「だいぶ目立たなくなっているね。
顔の大火傷の跡はなかなか良くならないかー…。仮面必須だもんな…深刻だ。目のダメージも考慮すると仮面なしはキツいもんね。
あの爆発に巻き込まれていたから、もろだったし。生きてることが奇跡だよ」

北川は手袋履いていいよと促す。鼎は手袋をそそくさと履いた。


「鼎…どうした?固まってるけど」
宇崎が声を掛けてきた。


「…名前を変えて良かったのかわからなくて…。本当の自分はなんだろうと」

「名前を変えたのは組織がお前を守るためだからね。どっちも本当の自分だろ?『悠真』も『鼎』も。
当時の北川が勧めたんだっけ?怪人に狙われるから名前を変えて生きろって言ったの。当時の鼎からしたら過酷だったろうに」
「あれは思い出したくもない…。自分の姿がああなって、何もかも失っているのに…」



――12年前。事件後。


悠真(現在の鼎)は搬送時、意識不明。生死をさ迷う状態。
全身に火傷を負った上に顔は大火傷だったことから全身包帯姿。彼女の意識はなかなか戻らず、意識が戻ったのは事件から5日後。

悠真は自分の姿に絶望し、うちひしがれた。彼女は当時高校生だったこともあり、かなりのショックを受けていた。


医師や看護師は「まだ若いから皮膚の再生は早い」とか、言ってた気がするが…怪人由来のものは回復が遅い。
悠真が搬送された病院はゼルフェノア直属病院だった。怪人案件なので組織直属病院に運ばれたらしい。


悠真に転機が訪れたのは事件から約2ヶ月後。ある天才外科医が病院に来たことで、悠真の回復は僅かながらに早くなる。

彼こそが現在ゼルフェノア最高峰の治療をするゼノク医療チームのチーフをする・加賀屋敷知哉(かがやしきともや)だった。





特別編 (2)へ続く。