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season3 第13話(4)

地下空間での攻防は続いているのだが、不穏な気配がしていた。
畝黒(うねぐろ)怪人態の触手を再生出来ないように装置を使い凍結させることで、封じていたのだがどうもさっきから切断されて凍らせた触手から「ミシ…ミシ…」と音がしている。

凍結装置が持たない!


囃(はやし)はヘトヘトになりながらも渾身の一撃を与え、ふらふらしながらも御堂達に任せる形に。
「……後は頼んだわ。…スタミナ切れみたいだ」

囃は陽一に回収された。陽一は御堂と晴斗を見る。
2人で翻弄させてるみたいだが、なんでブレードを発動させない?


嫌な予感は的中してしまう。凍結は中継ぎに過ぎなかった。
ミシミシ音を立てて割れる氷。氷が勢いよく飛んでくる。それと同時に切断された全ての触手が再生してしまう。

触手は同時に4本展開→縦横無尽につけ狙う。避けるだけで精一杯の御堂達。
よく見ると触手の先端には、蕾のような形で何かを発射出来るようになっているではないか!


一気に劣勢になる一同。さらに畝黒は右手を大きく翳した。

マズイ!!


とっさの判断で宇崎はブレードのある機能を使った。

それはバリア。このバリアのおかげで御堂達はダメージを受けずに済んだ。


「室長、なにこれ!バリア!?」
晴斗の声が上擦ってる。

「いいから集中しなさい。俺はバックアップするから。陽一は囃を見る必要があるでしょ。
囃は発動100%を何回も使っていたからスタミナが切れたんだね。和希、人使いが荒いぞ」


劣勢なのになんで余裕な言い方をしてるんだ?あ、元々室長はこんな感じだった…。


宇崎は触手よりもあの右手を封じたいと思っていた。

凍結により触手は一定時間止めることが出来たが、あの強力な攻撃の契機となる右手はまだ攻略法がない。



彼の対怪人用ブレード・颯雲(そううん)にはある思いが込められていた。
このブレードに関しては、1番最初に作られたプロトタイプを元にしている。

そのプロトタイプを考案したのが蔦沼だった。
対怪人用ブレードが出来た経緯は約15年以上前に遡る。ファーストチームから特務機関ゼルフェノアに名称が変更した頃だ。


それまでは既に存在している装備で怪人と戦ってはいたのだが、専用装備がないと決定打にならないと見た蔦沼(当時:司令から長官に移行中)は後輩の宇崎と共に試行錯誤した。
トライ&エラーを繰り返し、ようやく完成したのが「対怪人用ブレード」。基本的に日本刀型だが、使い手に合わせてオーダーすることも出来る。

このブレードは全隊員には支給せず、希望者のみに専用のものを作る形を取った。それにより、個性的なブレードが誕生。


プロトタイプを元にした颯雲は、長官が1番最初に作ったブレードを参考にしている。デザインもかなり初期型に近い。

使い手の力を発揮する「発動」は実用化から実装されたため、初期のものにはない。
陽一のブレード・燕暁(えんぎょう)はその初期〜実用化の間に出来たため、発動しなくてもそこそこの威力が備わってある。



宇崎は果敢にも飛び込んだ。バリアがある今なら行ける!
長官の仇を取らせてくれよ…!



時系列は少し戻る。宇崎と陽一がヘリで研究施設へ行く直前、西澤からある知らせを聞いた。


それは蔦沼の怪我の具合。

義手が破壊されたのは安易に想像出来たが、この時点では検査しないと再起不能になったのかはわからずにいた。


秘書兼SPの南が見た蔦沼は明らかに重傷。ベッドの上でうわごとを言っていたらしい。意識ははっきりしていた。
だが、立てないような状態にも見えた。再起不能になったのだろうか…。まだ報告が来ていない。

西澤は移動前の宇崎にこんなことを伝えていた。
『長官はこれを機に引退するかもしれませんよ』…と。



時系列は現在。


宇崎はやけくそ気味に攻撃を仕掛けてはやられてる。

どうにかしてあの右手を封じたい…!あれさえなければ…。だがなかなか近づけない!


再び右手を翳す畝黒。気のせいだろうか、笑っているようにも見える。
地下深くに突入する気か!?

宇崎はギリギリ御堂と晴斗をまとめて攻撃から避ける。これには2人も驚いていた。


室長!?


彼はギリギリ避けきれなかったらしいが、まだ戦えた。眼鏡にヒビが入ってる。
彼の眼鏡は防弾仕様だが、畝黒の威力には敵わなかったようだ。

「御堂・晴斗、先にやつの右手を封じろ…いいな」


右手を封じろ?
んなこと言われてもなかなか近づけないんだけど!?

なんとかして懐に入り込めば、行けるかもしれないが…。長官はその方法を使ったことでダメージを受けている。


「御堂さん、俺行くよ」
「晴斗…本気かよ……」

「俺なら小回りも効くし、可能性は低いけどゼロじゃないよ。やってみなくちゃわからないじゃんか」


晴斗は時々鼎と似たようなことを言う。影響受けすぎてるよ…いい意味で。


宇崎は再びバリアを展開する。どう見ても流血しているが。

「今だっ!!突っ込め!!」
晴斗は合図と共に自分のブレード・恒暁(こうぎょう)を秒速発動。刀身が青く光る。


この光は辺りを浄化するような温かみがあった。
そこにすかさず御堂も畳み掛ける。

「出番だぞ」
彼は鼎のブレード・鷹稜(たかかど)に話しかけた。すると刀身が赤く光った。発動されたのだ。


鷹稜は恒暁とは対照的で、発動すると攻撃力が上がる。
刀身が赤ければ赤いほど、威力は増す。限界まで攻撃力を上げたらどうなるのだろうか、そんなこと考えてる暇はない。


「御堂さん!早くっ!!」
晴斗は猛ダッシュで刀身の青い閃光を利用し、畝黒の懐へと入り込む。そして、目眩ましをしている隙に右手のひらを突き刺した。

晴斗はギリギリとブレードを食い込ませる。
「まだまだー!!」


青い閃光は増していた。辺りは青い光と赤い光に包まれている。

晴斗は一気にブレードを引き抜いた。畝黒の手のひらにある攻撃の契機となる、丸い紋様を消し去った。
まだ体力が残っている晴斗は畝黒の右腕を切断。


晴斗は御堂に選手交代した。


「み…御堂さん……後はよろしく」
晴斗はその場からふらふらと離れた。

「鷹稜!攻撃力最大にしてくれ!!ハイリスクなのはわかってる!!」
鷹稜は呼応するようにさらに光を赤く染めた。まるで炎のような光。


御堂も近接戦へ持ち込み、剣戟を繰り広げる。

畝黒はまだ隠し玉を持っていた。それは左手である。
「右手だけだと思ったか?人間よ」


御堂、追い詰められる。



本部司令室ではモニターのライブ映像が復旧。原因不明だが、謎のノイズが消えたため地下の状況がわかる。
そこに映し出されていたのは、今にも攻撃を受けそうな御堂の姿。


「和希っ!!」
思わず悲鳴のような声を上げる鼎。


モニターが復旧するまでの間、何が起きたかわからないが、いつの間にか劣勢になっていたのは理解した。

映像を見ると室長と囃がぼろぼろになっているではないか…。


陽一だけ、ほとんど打撃を受けてないように見える。


鼎は思わず目を伏せた。



地下では御堂が寸前で蹴り飛ばして回避。それもヤクザ蹴り。

蹴っ飛ばした…。


御堂は動ける陽一を動員することに。御堂が持つ鼎のブレードはまだ発動状態。行ける。
攻撃力を極限まで上げたせいか、消耗は半端ないが。


「陽一さん、行けますか…」
「なんのために力を温存していると思ってるんだい。このためだよ」

陽一は陽一なりに考えがあったようだ。


陽一は燕暁の刀身に何かをした。
今、刀身から音が鳴った?シャラララというウインドチャイムのような爽やかな音…。


燕暁に属性を付けるなら風。この音は合図だった。

陽一は燕暁をまるで指揮棒のようにたおやかに操る。


「御堂、連携しようか。君のブレードは攻撃力特化型・俺のブレードは風のようなものだ。
彼女のブレード、攻撃力最大にしてるなら今しかないでしょ。君がガス欠になる前に決着つけないとね」


もうガス欠寸前なんだが…。


陽一はひと振りで畝黒の触手を全滅させた。どうやらあの刀身から発した音は発動に相当する合図…らしい。
彼のブレードの見た目は変わってないのだが。


そこに御堂が畝黒の胸にブレードを突き刺した。
左手なんてどうでもいい。胸にあった核のようなものが引っ掛かっていたからで、無鉄砲にもいきなりそこを攻撃。


「行けえええええ!!頼むから鷹稜持ってくれよおおおおお!!!!」

鷹稜の刀身の色、赤い閃光は鮮やかに染まる。畝黒は予想外の猛攻に断末魔を上げ続ける。


御堂はさらに力を込めた。

「鷹稜、折れるなよ!!最後の仕上げだ!!」
御堂に呼応する鷹稜。辺り一面赤い閃光に染まる。まるで夕日のような綺麗な光だった。


彼はなんとか最後の一撃を喰らわせ、一気にブレードを引き抜いた。
と、同時に畝黒から大量の黒い血が流れ→御堂がその場からふらふらと離れた瞬間に大爆発を起こした。



ものすごい地響きが辺りに響き渡る。まるで地震のよう。


御堂はゼイゼイ言っていた。
「た…倒したぞ……」
「和希…無謀すぎだろうが…」


御堂と囃はハイタッチする。晴斗も陽一・宇崎と喜んだ。



本部司令室――

鼎と北川はずっとモニターを凝視していた。少しして。


「―――か、勝ったのか!?」

「…みたいだね。あの爆発は撃破したってことじゃないか。ほら」


映像を少し巻き戻すと、御堂がとどめを刺したことがわかった。
鷹稜の刀身の色が見たことのないような赤い閃光に染まっていた。綺麗な夕日のような、炎のような色に。


――攻撃力最大とか、和希らしい…。ハイリスクなのに。



ライブ映像では5人がぼろぼろになりながらも、互いを称えあう様子が映し出されていた。
和希の弾けるような笑顔が眩しい。晴斗は大喜びしてる。囃はテンションの高い2人にたじたじな模様。

宇崎と陽一は3人を見守っていた。





第14話へ。


season3 第13話(3)

御堂と陽一はふと思った。

――やつの触手がさっきから鬱陶しいくらいに攻撃してきてるが、本体はどう見ても近いよなー…。
触手は伸縮自在なのはわかった。


「…室長・囃(はやし)・陽一さん・晴斗。ちょっと提案があるんだが、乗ってくれる?
このまま翻弄されてちゃ、キリないだろ。触手にだけ攻撃してるっつーことはさ、本体明らかに近いだろ。カマかけてみるか?」

御堂はリスクを伴うが、畝黒(うねぐろ)怪人態を誘き寄せることにする。


その方法とは。



囃は地下1階に所々ある、コンテナ型の小さな武器庫を見ては目をキラキラさせていた。

「通路に所々あるこのコンテナ、ちっさい武器庫だったんか〜。はえ〜、知らなかった〜」
感心する囃。

とあるコンテナを開ける御堂。出しているのは手榴弾2つ。


「前に西澤か誰かから聞いたんだよ。地下1階には武器庫が隠してあるってやつ。しっかし…コンテナなのは気づかなかったわ。擬態かい。
この施設は『最初から怪人襲撃を想定して造られた』っていうから、特に地下は抜かりない。研究員も戦えるように訓練されてんだよ。特に地下担当はな」

「手榴弾で何する気だよ」
「…え?挑発。やつは簡単に爆破出来るらしいじゃん。ならば、手榴弾で誘き寄せてやる」


ここを爆破させる気かよ!?
御堂、狂ったか!?


「なに、慌てた顔してるんだ。地下は手榴弾程度じゃ壊れねーよ。地上よりも要塞化してんだぜ?
それを活かすのさ。簡単に壊れない地下を利用させて貰うぞ」

御堂はニヤリとした。これはゼノク関連施設の構造をある程度わかってないと思いつかない。


宇崎は御堂の無謀な作戦にヒヤヒヤする。
いくら敵が姿を現さないからって、手榴弾は無謀すぎるっしょ!

「室長、無謀じゃねーぞ。
鼎。ゼノク隊員の戦闘データと畝黒の攻撃パターンを朝倉から送れるか?」


鼎の通信音声が聞こえた。

「研究施設での戦闘データだな。朝倉は既に分析していたよ。
今モニターに出す。――和希、畝黒は触手をメインとして攻撃している傾向にある。触手攻撃はバリエーション豊富と見受ける。手のひらを翳して広範囲攻撃、爆破も確認されたよ」


なるほどな〜。触手と手のひらを翳したら要注意か。


「ありがとな。んじゃラスボス様のツラ、拝んでくるわ」
「和希!……死ぬなよ」

御堂はカメラに向けて笑ってみせた。
「死なねぇよ」


御堂の言葉に励まされた。
鼎は全員に言った。

「まだ諦めてはいけない…。諦めるなよ!」
鼎の肩が少し震えていた。彼女からしたら、御堂が消えてしまいそうに見えてしまって…。

北川は鼎を落ち着かせる。

「紀柳院、大丈夫さ。面子を見てみろ。精鋭中の精鋭ばかりだぞ。
隊長クラスが揃うなんて滅多にない。まさか…陽一含めて隊長クラスが3人いるとはな〜」



地下では御堂が手榴弾2つを手にし、物陰から触手に向けてそれを一気にぶん投げた。
爆破した手榴弾に気づいたのか、触手に変化が出始める。


――読み通りだな。反応しやがった!


地下の堅牢な造りのせいか、爆破程度では被害なし。

触手はだんだんある場所へ収縮していく。それを追う5人。5人まとめてだと的にされてしまうため、宇崎・陽一組と御堂・囃・晴斗組に分かれた。

囃も次の手榴弾の安全ピンを抜く。囃が手にした手榴弾は通常よりも威力が高いタイプ。
彼も触手の方向に振りかぶって投げた!まるで野球の投球フォームなのは置いておいて。


囃が投げた手榴弾はかなりいいポジションで勢いよく爆発。
畝黒は敵に気づいたらしく、出てきた。


「貴様らか…挑発してるのは。私は非常に怒っている…!」
現れたのは禍々しい見た目の畝黒怪人態。触手がウネウネしているうえに、畏怖すらも感じる威圧感がある。


こいつがラスボス様か。


御堂達は畝黒とついに対峙。
長官と南を戦闘不能にし、精鋭含むゼノク隊員をほぼ全滅まで追い込んだ存在なだけに、ここで仇を取らないと固く誓う者もいた。
それは宇崎だった。宇崎からしたら蔦沼は先輩。


長官、仇を取りますからね――



本部では仁科達4人が帰還していた。霧人達バイク隊もパトロールを終え、戻っている。
東京に出現した怪人はやはり殲滅されていた。


状況を朝倉経由でざっくりと聞いた仁科は冷静だった。
「御堂なら大丈夫だろうよ。あいつ、タフだから。逆境にもめちゃくちゃ強い。ピンチになれば強くなるヤツだろう?」
「仁科副隊長、なんかラフすぎやしませんか」

戸惑う朝倉。
「最前線の御堂達の心配もいいけど、紀柳院の心配もしてやれよ。彼女はよくやってると思ってる。
あれからずっと何時間も指揮してるって聞いたから。北川元司令がサポートしてるのは頼もしいよ」
「司令室…行かないんですか?」

「邪魔したくないからね。紀柳院は繊細だからなおさらだよ」


……補佐、あれから大丈夫なんだろうか。休憩まともにしてないよね?



本部司令室では瀬戸口が気を利かせてた。


「食事どころじゃないでしょうから、飲むゼリーや携帯食糧持ってきました。飲んでください。エネルギー補給は必要です」
「あ、ありがとう…」

戸惑う鼎。おどおどしている彼女は珍しい。



地下では一気に殺伐としたバトルが起きていた。どうやら畝黒は地下5階へ行く方法がわからなかったらしく、さ迷っていた。
地下5階へは「1階にあるとあるエレベーター」を使わなければ行けない。しかもパスワードが必要なため、畝黒は力づくで地下深くへ行こうとするも→地下特有の強固な壁に阻まれた形。

つまり、地下特有の対怪人装備にまんまと嵌められたわけで。
研究施設を設計したのは蔦沼だ。間接的に蔦沼に嵌められたとも言える。


「晴斗と囃はまだ発動させんなっ!タイミングを見計らえ!!俺もまだ発動させない…!
陽一さん、先鋒頼みます」
「了解したよ」


陽一は果敢にも畝黒相手に攻撃する。元隊長なだけに、次々触手をぶった切っていく。ちなみにブレードの発動は一切使ってない。
触手の再生をさせない戦い方だった。

「再生させないよ」
余裕すら見せる陽一。


そこに宇崎が突入する。宇崎は戦闘慣れしてないが、ブレード補正でなんとか戦えてはいた。

「宇崎!足手まといになるなよ!」
「陽一ひどいぞ〜」


先鋒は年長者が行く作戦だった。畝黒怪人態は触手を再生出来ないでいる。
囃は武器が入っているコンテナからある物を見つける。
それは小さな凍結装置。


囃はニタァと笑った。

「触手を再生出来ない方法みーっけた」


この囃の意外な活躍で一気に優勢になる。



本部司令室ではモニターのライブ映像が見にくくなっていた。

「ノイズがひどいな…。交戦中か。音声だけははっきりと聞こえているのだが」

さっきから晴斗の叫び声が仕切りに聞こえてる。攻撃を受けた感じではなさそう。
囃の声が聞こえた。


『んじゃあ、凍結装置起動させるぞ』

凍結装置?そんなもの、地下にあったのか?



地下では囃の機転により、凍結することで触手の再生を無効化した。


「ハマったな〜。和希・晴斗、お前ら暴れちゃえよ」
「囃。ブレード発動させてくれ。50パーくらいで」


50パー?


囃は言われるがまま、ブレードを発動させる。50%ならまだ消耗は少ない。

彼は野太刀型ブレードで凍結部分を一撃で破壊。そこに晴斗と御堂が一気に畳み掛ける。まだ発動はさせない。まだ…!


「晴斗…まだ発動させるなよ。見極めろ。囃がチャンスを作ってくれたんだ、無駄には出来ねぇ!」
「御堂さんわかってるよ!」


囃は御堂の指示通り、蛟(みずち)発動100%を使うことにする。
100パーを使わせるとか、人使い荒いって…。


囃は中距離から蛟を振り回した。ものすごい衝撃波が発生。
バリバリという、破壊音と共に畝黒はダメージを受ける。かなり打撃を受けた模様。


なんという、破壊力だ…。
この男、ただ者ではない…!


御堂と晴斗はまだそれぞれのブレードを発動させてない。
晴斗はここまで通常で戦う意図がわからなかった。


御堂さん、タイミングを見計らえってどういう意味だ?


囃の猛攻は止まらない。
こうなったらヘトヘトになるまで破壊してやる!

地下特有の構造を活かし、囃は暴れている。いくら衝撃波を発生させても地下空間は壊れてない。なんて強固なんだ…。


御堂は晴斗をリードしながら交戦中。

「晴斗、まだでしゃばるなよ!」
「どういうことなの!?」
「よそ見すんなっ!今は囃の好きなようにやらせとけっ!」


囃さんを野放しにしたのはわざとなんだ。囃さんの性格ならやりそうだもんな〜。


陽一と宇崎は一旦退く。

「ここからは彼らに任せましょう。…宇崎、体力ないのか?」
「うるさいな」


season3 第13話(2)

本部司令室――

司令室のモニターでゼノク研究施設の館内マップと照らし合わせている鼎と北川。
「施設自体大きいから構造は複雑なんだな…。地下5階へ繋がるエレベーターはどれだったか」…と呟く北川。


ゼノク研究施設は巨大。施設前方にはエレベーターが2基あるが、後方にもエレベーターはいくつかある。


「地下5階はパスワードを入力しないと行けないエレベーターがひとつだけあるとは聞いたが、パスワードを知る人間は長官と地下エリア担当の冬木室長、それともう1人は誰だったか…とにかく3人だよ」
「エレベーター…敵に使われたらアウトなんじゃ…」

危惧する鼎。



研究施設内部に突入した御堂達。
晴斗はこんなことを言う。


「エレベーター…使えるよ?」
「バカ!この研究施設は特殊だ。確かひとつだけ最高機密のあるフロアに直結するエレベーターがあるとか聞いた。うろ覚えだけどよ。
パスワードはわからん」

御堂はいつもの調子。囃(はやし)はある提案をした。
「階段あるぞ〜。宇崎司令と暁の父親は階段から行ったかもねぇ。階段で地下行くか?」
「室長達を先に探さないとな。晴斗も来い。エレベーターは危険すぎる。仮に直結するエレベーターを当てたとしてもパスワードわからんからどっちにしろ行けないだろうよ。
…それにこの惨状じゃあ、パスワードを知ってるやつは負傷してるだろうし」


御堂の勘は当たっていた。

地下5階のパスワードを知る人間の蔦沼と冬木はこの襲撃で負傷、加賀屋敷は医者なため今は手当てに追われて多忙を極めている。
畝黒(うねぐろ)襲撃で負傷者多数の殺伐とした病院に行くわけにも行かない…。


そんなわけで御堂達は階段で行くことを選択。先にやることは宇崎と陽一を探すことだ。



地下1階。宇崎と陽一は人気のない地下をずんずん進む。
2人はそれぞれ武器を構えている。

「どこにいるんだ?出てこいよ」
「宇崎、挑発はいかんだろ…」


滅多に戦闘をしない宇崎はナチュラルに挑発していた。それに呆れる陽一。
お前、それでも司令か…。

宇崎は司令というか、研究者の方が強いけど。



御堂達は急いで階段を下る。


「ここが地下?地上よりも広っ!」
囃はオーバーリアクション。

地下は地上とは違い、武骨な造りになっていた。この研究施設は地下に重きを置いているため、地下に関しては怪人の攻撃を受けても滅多に壊れないようになっている。


晴斗はなんとなく武器を構えた。それを見て御堂も銃を構える。囃は野太刀型ブレードを担いだまま。

「気味悪いよなぁ〜。出るなら出てこいって」
「囃、なんで挑発すんの。やめろ。室長達はどこにいるんだよ…!」


地下は地上よりも広いため、迷う御堂達。これは宇崎達も同じだったわけで。

城みたいな造りしてるよな〜この研究施設…。簡単には行けないようになってんのか。地上も複雑だし。シンプルなのは1階だけだもんな。
さすがはゼノクの要だわ。


御堂は関心してしまっていた。



「御堂達と宇崎達は階段を使った模様。危険はまあまあ回避されたかな」
あっけらかんとしている北川。鼎は気を張りつめていた。

「危険は回避?畝黒と接触してないだろうに…」


そこに割り込む瀬戸口。
「紀柳院さん少しは落ち着きましょうよ、ね?」

鼎は瀬戸口を見た。瀬戸口は民間人だったはずなのにいつ、隊員になったんだ?


「…瀬戸口、お前いつの間に隊員になったんだ?あの時は民間人だったはずだろ」
「人手不足の解析班の募集が出ていたんですよ。バイトで。そしたらなんかわからないけど解析班にそのままいろってチーフに言われて今に至ります。
今はバイトじゃないですよ?正式に隊員ですし…。救護スキルも身につけました」


バイトってあるんだ…。解析班ならバイト募集しそう。あの朝倉だし…。



地下1階。宇崎達は長い鞭のようなものでいきなり攻撃を受ける。
動きは不規則なため、避けきれない。

「なんかニョロニョロ来たーっ!」
「避けろよ宇崎!ったく、どんくさいよな…お前…。昔と変わってない」


余計なお世話だ、陽一。
この鞭みたいなもん、畝黒か?畝黒怪人態には触手があるとは聞いてたが。



この音は御堂達にも聞こえていた。

「なんかビシビシ聞こえたよね!?叩くというか、激しく斬るような音…」
晴斗は不安そう。地下は音がとにかく響く。

「室長達、あっち側にいるんじゃねぇか?行くぞ!」
「和希、おいっ!…ったくしゃーねぇな〜」


3人は急いで向かう。



宇崎と陽一は鞭もとい、触手に翻弄されていた。触手は1本だけだが、異常に長い。


「この鞭、斬れるのか!?痛っ」
宇崎は切り傷を作っていた。

「宇崎のそのブレードは飾りか?今使えって!バカか!?」
陽一に言いたい放題言われる宇崎。昔もこんなしょーもないやり取りしてたっけ。

2人はゼルフェノア黎明期・ファーストチーム時代からのメンバーだ。北川元司令も黎明期メンバーの1人である。


陽一は引退後もたまに臨時隊員として駆り出されていたため、感覚は鈍っていないようだった。
鮮やかに触手をかわし、鞭を自身の愛用の対怪人用ブレード・燕暁(えんぎょう)で斬る。元隊長の貫禄は健在だった。


相変わらず陽一はすごいよな…。現役まんまじゃないか。


油断した宇崎に触手の魔の手が襲いかかる。宇崎はとっさに自作の対怪人用ブレードを抜刀した。
彼の対怪人用ブレードの銘は「颯雲(そううん)」。日本刀型のブレードだが、研究者自らが自分用に作ったため、スペックは隊員用とは異なる。

「発動」という、使用者のリスクを負う必要がなくても簡単に扱える仕様。研究者らしい装備だ。


陽一は颯雲を見るなりスペックを見抜いた。

「完全なるお前用なんだな、それ。発動いらずのブレードですか」
こうしてる間にも触手は2人を襲う。陽一のカバーで宇崎はなんとかピンチを切り抜けていた。



御堂達が着いた時には宇崎と陽一は少し息を切らしていた。


「あ、和希ぃ。来ていたの」
「なんでマイペースなんだよ室長。合流したんだ、畝黒探すぞ」

「父さん大丈夫?」
晴斗は父親を心配するも、陽一は無傷。
「何ともないよ」


触手に攻撃されたと2人から聞いた。畝黒本人は近いはず。
…それにしてもこのフロア…めちゃくちゃ広いな。見た感じ、地下5階へは行けないようになってるようだが…。

目的のためなら手段を問わない畝黒だ、強引にここを突破してもおかしくはない。
早急に探さないと。


御堂は焦っていた。



本部司令室。映像を見た限りでは地下1階に全員がいると判明する。
鼎は指示を出した。


「全員慎重に行って欲しい。館内マップを見たんだが、地下1階からは5階に行けないようになっているんだ。
1階のどこかにあるエレベーターを使わないと行けないんだよ。それを踏まえて行動して欲しい」

御堂から通信が入る。
「んなこたぁ、わかってんよ。鼎、無理だけは絶対にするなよ。
お前ずっと長丁場で指揮してるって聞いたから…無理だけはすんなよ」

大事なことなので2回言った御堂。



ゼノク隣接組織直属病院・とある隊員用の病室。
そこには二階堂達がいた。

二階堂と憐鶴(れんかく)は重傷・上総(かずさ)と粂(くめ)は軽傷だが粂は畝黒による恐怖でトラウマを負い、怯えている。


ベッドに横たわる二階堂と憐鶴は痛々しい姿。上総と粂も痛々しいが。

特に二階堂は右腕の義手を畝黒にめちゃくちゃに破壊されたため、現在は義手を外されている。二階堂の右腕は二の腕から先がない。

それが今、剥き出しになっている。
彼女は薬で眠っていた。右目も怪我したんだろうか、包帯姿が痛々しくて。


上総は二階堂の隣のベッドにいる。この2人は小学生から腐れ縁。


いつだっけ、二階堂と会ったのは。小学生の時だったな…。
二階堂は生まれつき右腕の二の腕から先がない先天性障害で、子供の頃から義手を着けていた。利き腕は左腕。

二階堂はそんな自分を個性としてポジティブに受け入れていた。
小学生時代、「この義手カッコいいでしょ?」って、あいつは見せびらかしていたっけ。


彼女の左脚が義足になったのはゼルフェノアに入ってからだ。5年以上前の任務中だった。
相手の怪人が予想外に強すぎて、彼女は左脚の切断を余儀なくされる。

それでも彼女はポジティブに受け入れていた。本当は辛いはずなのに。


「……お前、頑張りすぎだよ…」
上総は眠っている二階堂を見守った。二階堂が必死な理由は俺の存在も関係してるんだろうか…。


憐鶴はベッドで上の空になっていた。どうやら目が覚めたらしい。
彼女は戦闘中、仮面を着けていたため顔や頭は怪我してなかったが畝黒に対し、キャパオーバーの発動を使った影響もあり、動けずにいる。



苗代と赤羽は隣の病室にいた。この2人は軽傷。


「憐鶴さん…本当は辛いんじゃないのかな…」
「普段はあんなだけど仲間思いだし。
聞いたんだけどさ、憐鶴さん…キャパオーバーの発動使って限界来てダメージ受けたのもあるって」

「キャパオーバー!?無理してたの…?九十九(つくも)でそれは危険すぎるのに」
「二階堂だって諸刃の刃を使って無理してたじゃん…。
知らなかったよ、隠しブレードなんて…。二階堂がいないと被害は確実に拡大してたと思うと…怖い」

「苗代、二階堂はまだ目を覚ましてないって聞いた。ダメージも深刻だって」


沈黙する室内。



地下1階では再び触手の脅威が。


「囃!一撃で衝撃波出せるんだろ!?発動使えって!」
「発動使えば消耗するわ!!このブレードは通常でもパワーあるのをお忘れか」

ギャーギャー言い合う御堂と囃。


そうだった。囃の対怪人用ブレード・蛟(みずち)は通常時はパワー特化型。
発動時は一撃必殺型となる。


「なんのためにパワー系にしたと思ってんだよ。和希はわかってないよな〜」


囃は通常使用で触手をぶった斬る。通常で畝黒の触手を斬った人は囃が初めて。

ゼノク隊員精鋭が苦戦した触手に対して囃はパワーもあるため、タフ。


今いるメンバーは隊長2人に司令が1人・元隊長と学生とほとんどが戦闘力が高い面子。
精鋭の中の精鋭が2人もいる。本部隊長・御堂と支部隊長・囃が揃うことも珍しいのに、黎明期に活躍した元隊長の陽一までいるのだ。

晴斗は学生だが戦闘中に例外的な力を発揮する率が高い。だから鼎は彼を御堂と共に同行させた。


触手は再生するのか、次々襲いかかってくる。
ゼノク隊員戦とは違い、かなり攻撃的。触手で斬ろうとする。

銃では拉致があかないため、結果的に対怪人用ブレードをメインとなっている。


――触手はくどいくらいにわかったけど、本体はどこだ!?どこなんだ!?


無題

話題:おはようございます。
昨日の拍手20個ありがとうございます。昨夜はアストリッドとラファエル2を観てから寝ました。

アストリッドはコミュ障というよりかは、警察の文書係としての記憶力が半端ないキャラだったわ…。研究者タイプ。
感情が乏しくて機械的な話し方をするからか、なんだか最初は馴染めなかったんですが、日系人のテツオといい感じになってるのは微笑ましい。

このドラマ2期の見所のひとつはアストリッドの恋らしい。本人が恋したことに気づいてないのが…。
ラファエルが「それは恋よ」とアストリッドに言って、彼女がその後別室でちょっとだけテツオから貰ったメモを大事にしまうシーンはなんだか応援しちゃうかも。

テツオも研究者タイプなのかねぇ。2人とも不器用っぽいのが気になるわ。



昨夜、ラストマン後半約20分だけ見た。クライマックスまでだらだらと。
よくわからないが、あの主人公2人は兄弟オチ!?何よりも王林の役が地味に重要やん!
王林はラストマンが初演技らしいけど、違和感なかったように見えた。


青森県民的には王林ブレイクは嬉しいとです。一気に全国区になったよなぁ。

王林ちゃんすごいわ。ジョナゴールドもたまに全国区のバラエティー番組に出てないか?沸騰ワード自体は嫌いだが、たまにジョナが出てるよな〜。


最近のローソンCM、松山ケンイチと王林だから地味に青森推し?



月曜はグレかま→夜更かしパターンがほとんどですが、たまに夜更かしだけ見て寝ることもある。



自己満小説の設定、携帯止まる前にノートに書き写す作業…ついに組織設定まで書き終えた。疲れた。
制服設定もあったからそこも追加しといた。制服兼戦闘服だけど。
全て書き写すのはしんどい…。一部簡略化してるけど。

これで自己満小説、残りは完結させるだけとなりました。
13話もハードな展開になってますが、ここで二階堂の過去をようやく出せる。


長官がなんで両腕が義手になったのかはseason1で出てましたが(改めて設定見ると経緯が壮絶だな)、二階堂の右腕の義手と左脚の義足に関してはまだ触れてなかった。


season3は集大成的な感じなんで、二階堂と上総の腐れ縁にも触れられるかな…。今さらすぎるが、二階堂はゼノクの主要人物なんで。
話の流れ的に、二階堂達がいる病室出てくるからそこで回想入るかも。


クライマックスは近づいてます。残り3日で仕上げたい。じゃないともやる。

ラスボスの倒し方、ちょっと悩んでる。そこまで考えてなかった。話の流れは携帯止まっている間にほとんど組み立ててあるのだが、肉付けしないとショボい感じになるんだよ…。
ラスボスは今までとは強さが桁違いに違うからね〜。触手があるんで攻撃パターンは多彩なんだよ、畝黒怪人態は…。


しかも残虐かつ、冷酷というテンプレ的な感じだが。怪人態になるとドSだし。

目的のためなら手段は問わないだけに、味方からしたら厄介すぎてな…。


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