事件前。本部の違和感に気づいたのは、時任の他にも御堂もいた。御堂は司令室にいきなり入るなり、対怪人用の銃を持っていく。


「和希、珍しいな。対怪人用の銃持つなんて」
宇崎が声を掛けてきた。

「なんかそわそわするんだよ、きな臭いというかさ…」


きな臭い?和希の勘なんだろうか…。



本部・正面入口では武装集団の一部が偽物の制服を着て隊員に紛れ込み、侵入。

制服姿の数人の手には紙袋やリュックを背負っている人もいる。彼らは荷物の中に時限爆弾を仕込んでいた。


武装集団本隊は通信を聞き、時を来るのを待つ。
そして―――



白昼堂々、それは起きた。


本部5階から爆発音。隊員達はパニックになる。セキュリティシステム作動。
これを見計らったかのように、武装集団本隊が次々侵入→1人は管理塔へ行き、警備員を脅して警察への連絡を絶たざるを得ない状況に。警備員2人は縛られ、身動き出来ない。
他の警備員も拘束された。


管理塔を制圧したのは武装集団のリーダー。武装集団本隊は全員、ガスマスク装着な上にボイスチェンジャーで声を変えている。

「セキュリティシステムを制圧。これより本部を占拠する」
リーダーはシステムを手際よくハッキング、ゼルフェノア本部の出入口は全て封鎖、本部は要塞と化した。



警視庁。西園寺はゼルフェノア本部からの自動通報に対応していたが、電話が通じない。

「何が起きた!?電話が通じないぞ」
「西園寺警部補、自動通報ということは怪人案件ではありませんね。人間案件かもしれない」

そう言ったのは部下の束原。西園寺は各所に指示。
「ゼルフェノア本部の今現在の状況は?」
「モニター見た時点では5階から煙が上がっています。爆発音があったとの情報が」

「爆発?」



ゼルフェノア本部。武装集団はマシンガンで威嚇射撃をし、隊員達を脅す。

「おらー、さっさと歩けー」


隊員達は武装集団に怯えてる。怪人相手には強い組織だが、人間相手…それも武装集団となると手も足も出ない。


管理塔ではリーダーがハッキング完了。そして指示を出す。

「電波遮断・電話線も切った。これで外部には連絡出来ない。
お前ら、各階制圧出来たか?」

次々と「制圧完了」の返事が返ってくる。出入口は全て封鎖されたので隣接する組織直属病院への連絡通路も封鎖されている。


リーダーは次の指示を出す。
「隊員どもを1ヶ所に集めろ。1階な。
レオナとフユヅキは司令室に行け。司令官と司令補佐がいるはずだ。くれぐれも紀柳院司令補佐には危害を加えるな」
「りょーか〜い」

女が返事した。彼女がレオナか?



本部の外部では機動隊が数ヶ所に待機。外部からだと内部の動きがわからない。


機動隊のひとりが呟いた。

「何が起きているんだ…?」



本部・司令室では武装集団のレオナとフユヅキが宇崎と鼎を発見。
2人は銃を向けながら話してる。2人は両手を上げた。


「あんたが宇崎司令官か。…で、そちらが例の仮面の紀柳院司令補佐だね」
「お前達は何目的だ!?」

鼎は物怖じせずに生意気そうな女に聞いてる。


「紀柳院司令補佐には危害は加えませんよ。安心して下さい。
私達の目的は本部の乗っ取りさ。リーダーが動いていますので、下手に逆らわない方がいいですよ?死にたくないよねぇ」

鼎はガタガタと震えていた。
「紀柳院司令補佐、あなた…身体は大丈夫でしょうか。戦えないんでしょう?
加賀屋敷には世話になったはず」
「加賀屋敷!?…なぜその医者の名前を知ってるんだ」


「紀柳院司令補佐なら答えましょうかね…。リーダーもあなたなら答えてもいいと言ってますから。
…あ、フユヅキ。司令は拘束してやって」
「へーい」

フユヅキは手慣れた様子で縛っている。


「さぁ、司令補佐。ここから出ましょうか。こちらもあなたの状態をよーくわかっておりますので」
「おいっ!鼎が発作起こしたらどうするんだ!?」

「それも十分わかっていますよ。司令、ガタガタ騒がないで下さい。死にたいのですか」
フユヅキはさらに銃を近づける。レオナはフユヅキに指示。


「フユヅキ。司令は任せた。私は司令補佐をある場所へ連れて行く。司令補佐は加賀屋敷に救われた身だ。殺すわけには行かないだろ?」



この事件、御堂は密かに単独行動していた。

武装集団、隊員に紛れ込んだやつが2人に黒ずくめの連中が8人か?
システム遮断されてるってことは管理塔に1人いる…。電波遮断されててスマホも使えないが…通信は使えるのか?


御堂は試しに小声である場所に通信してみた。それはゼノク。


「誰でもいいから聞こえるか?ゼノクの3役」
「どうした?御堂」
通信に気づいたのは西澤。

「本部が武装集団に占拠された。隊員全員拘束されてやがる。室長の姿が見えない。鼎もだ」
「犯人の映像や画像は出せるか?」
「電波遮断されて上げることが出来ない。今のところ動きなしだが、外には機動隊が待機してるっぽい」

「御堂、司令と司令補佐を探せ。それで目的がわかるはず」
「わかった」



1階では緊迫した状況に。5人の武装集団に囲まれているため、四面楚歌。

「下手に逆らわない方がいいよ〜?君たち撃たれたいのかな〜?」
ヘラヘラ笑っている男が言った。

「司令と司令補佐のこと、気になっているのかな?気になっているよねぇ?司令補佐には危害を加えないから大丈夫。司令は拘束したけどな」


そこに名もなき隊員が聞いてきた。

「お前達の目的はなんだ!?本部をどうする気!?」
「逆らうなって、言ったでしょう?」


男は冷酷に隊員を射殺。辺りは騒然。

「君たち、逆らうとこうなるからね。リーダーの言葉は絶対だから」


武装集団の1人が即死した隊員の遺体を病院の方向に輸送。


この緊迫した状況で時任は恐怖でガタガタと震えていた。彩音は小声でなんとかしようとする。

「いちか、私がいるから…。御堂さんの姿が見えない…まさか」


1階ではさらに威嚇射撃を続ける。

「俺達はあんたら隊員には用がないの。あんたらは逆らったら終わりだからね。そろそろリーダー動くかな〜?」



本館6階。鼎はレオナに連れられてある部屋へ。


レオナはガスマスクを脱いだ。
「あなたが『仮面の司令補佐』紀柳院鼎ですね。ちょっと失礼します。あ、自由に話しても構いません」


レオナと名乗る女は鼎の身体を診ているように見える。


「ちょっと上着、ファスナー開けて貰ってもいいですか。手術痕を見たいので」

鼎は渋々上着のファスナーを開け、インナーの黒Tシャツを見せる形に。鼎はTシャツを捲り、レオナは胸の手術痕を見た。


やっぱり加賀屋敷がしたものだ…。


「ありがとうございました」


鼎は制服を元に戻す。
「全身火傷の事は聞いてましたが、身体の方はだいぶ目立たなくなってきてますね。顔は…」
レオナは鼎の白い仮面を見る。白いベネチアンマスクが際立つが…。ずっと彼女はうつむいたまま。

「お前は何が言いたい」
鼎はいつも通りの冷淡な話し方。
「あなたは加賀屋敷について知りたいのでしょう?あの天才外科医について」


なんで武装集団が加賀屋敷を知ってるんだ?
それにこの女…やけに手慣れていた。元は看護師なんだろうか?手術痕を見ただけで執刀医を当てている…。



一方の御堂は武装集団とバトルを繰り広げることに。


「御堂和希、発見」

武装集団は立て続けにマシンガンを発砲。御堂はひたすら攻撃を交わしながら逃げるハメに。


俺、狙われてんのか?
それより室長と鼎はどこにいる!?


御堂は対怪人用の銃で対抗。対怪人用装備なら人間には害がない。当たるとかなり痛いけど。
これが対怪人用の刃物なら、峰打ちで戦っているような感じになる。

御堂は肉弾戦と銃をメインにひたすら戦っていた。



本部外部では銃声が聞こえたので機動隊は緊迫している。

「中の様子がわからないんじゃ…突入出来ないぞ」



ゼノクでも動きが。西澤が指示を出す。


「狭山・二階堂・三ノ宮・粂(くめ)。早急に本部へ向かってくれ。着いたら機動隊と合流して。
三ノ宮はハッキングされた本部のシステム解除を試みてくれ」
「了解です」

「粂と二階堂は遠距離攻撃可能だから、突入の契機を作るんだ」
「了解」
「相手は人間だから手加減してくれよ。銃声聞こえたというからマシンガンか何かしらは持ってるはず。あと爆弾にも気をつけろ」


4人は早急に本部へ。



晴斗はニュース速報で流れた「ゼルフェノア本部、武装集団に占拠」のニュースに戦慄。
ニュース映像ではある場所から黒煙が上がった様子が。映像は爆発直後のものらしい。

「鼎さん!?ええぇ!?」


晴斗、思わず固まる。武装集団って、つまりテロリストなわけで…えーと相手は人間というわけで?
怪人相手ならまだしも、人間相手だとどうすんだよ…。



御堂はひとり、孤軍奮闘していた。

鼎はどこにいる!?あいつに何かあったらタダじゃおかねぇからな!





特別編 (2)へ続く。